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動き出した TC-707MC HALF TRACK HEAD |
1970年前後に製造された TC-707MC 骨董品テープデッキです。当時は1モーター3ヘッド仕様である SONY TC6635 を常用使用していました。この商品はフェザータッチ操作でプロ仕様のテープデッキであり 同等のステレオデッキは貧乏人にとっては高値の花の商品でした。
物を捨てられない症候群の 無銭庵 仙人 と申します。道楽で骨董品オーディオ機器を現在でも稼働できるように試行錯誤の作業内容です。個人的な解釈記載がほとんどであり参考程度の記述内容とご理解ください。記載内容において誤記載・誤解釈が多数含まれていると思います。
実はこのデッキ間違って入手したデッキです。本当は SONY TC-707FC を入手したかったのですが よく内容を調べずに購入したため お遊びの修復内容です。本当の目的は骨董品オープンリールデッキ修復作業において基本となるテストテープ作成目的でしたが当てが外れてしまいました。その後程度は良いとは言えませんが TC-707FC は入手しました。
憶測です。 1970年代電波技術協会では 放送局に納品する BTS規格テストテープを製造しています。プロ仕様の基準となる録音機でフルトラック記録、テストテープを一本づつ作成していたと思われます。外国製の簡単にメンテナンスができない録音機ではなく比較的簡単にアフターサービスが可能である 国産の録音機で作成していたと 個人的な解釈です。それに該当するデッキが TC-707FC スペシャルバージョン であろうと思います。SONYでは放送局仕様の放送機器も多数製造していました。当時国産の音響機器プロ仕様品を製造していた会社は DENON TEAC OTARI SONY であったとの個人的記憶です。
TC-707MC は1/4インチテープ 2トラック・モノラル仕様の構造です。本当はフルトラック仕様のデッキを探していましたが 後の祭り状態です。フルトラック・モノラルデッキは SONY TC-707FC が該当します。国内ではフルトラックのオープンリールテープデッキは見かける数が少なく なかなか中古市場では流通はしておりません。このTC-707 シリーズのデッキは多種類存在します。型番などは多少違いますが同じメカニズムで動作するデッキが長年に渡りソニーから販売されたテープデッキ 3モーター・3ヘッド 仕様基本的な構造のデッキです。多少の参考となれば幸いです。時々話の内容が脱線しますが愛嬌とご理解ください。
同等のメカニズム搭載品として 2Tr-2Ch(TC-707S,SD), 4Tr-2Ch 4Ch-Play(TC-9520), 4Tr-4Ch(TC-9540), 4Tr-2Ch(TC-650),4Tr-2Ch Rev-Play(TC-651), 1Tr-1Ch(TC-707FC), 2Tr-1Ch(TC-707MC) など多数の種類があります。写真等を見ますとヘッドブロック周辺は同じ構造です。特に販売数の多い機種は4Tr-2Chフェライトヘッド搭載モデル1972年製 TC-9400A と思います。
1970年代は猫も杓子もステレオが爆発的に販売量が増えました。マルチチャンネルステレオ、コンポーネントステレオ、4チャンネルステレオ時代が到来します。その後カセットデッキが普及するまではオープンリールデッキが主流でした。当時DENONからはマニア仕様の DH-710S が販売されました。発売当時悪友Cが日本コロンビア・ショールーム正面に店頭展示していたデッキを購入し自慢話を聞かされています。
前置きはこれまでとし 本題に進みます。時々話の内容が錯綜しますがご勘弁ください。
SONY TC-707MC の構造
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本体正面 |
通常のステレオ・テープデッキと異なり本体内にモニターアンプ・スピーカーが搭載されており 初期のテープレコーダー構造と同等です。本体は可搬型として設計されており 灰色の木製キャビネットに収納されています。両サイドには丈夫な取っ手が取り付けられています。
作りとしては頑丈な構造です。高々7号リールのテープレコーダーですが内部は鉄板プレス加工構造であり3個のAC駆動モーターが搭載されていますので通常のデッキに比較すると結構重量があります。
入手時ほとんど使用した形跡がなく 約半世紀経過している機器ですが保管状態が良好であったと思われます。よく錆の発生する標準ジャック取りつけナットなどは ピカピカの一年生状態です。もちろんリール台も傷もなく錆もありません。
入手後各部点検すると一応各部の動作はしていると判断しました。
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メカニズム構造 |
消耗品であるゴム関係の部品は キャプスタンドライブベルト・カウンターベルト・ピンチローラーが該当しますが ほぼ半世紀経過しているデッキですがゴム関係部品での機能不良となるようなの大きな劣化はありませんでした。各部分解掃除程度で働く状態です。
生テープを装着して各部の動作テストを実施するとブレーキの利き具合が悪くテープたるみなどが確認できました。長年使用した形跡はなく プレーキシューが長時間圧接状態であったためシュー部分の劣化が判明しました。
ブレーキ構造
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修復したブレーキ機構 |
今回サービスマニュアルなどを探しましたが見つけ出すことができません。ブレーキ機構調整方法も不明のまま修復しています。
構造は簡単なのですが 各モードから移行時必ずブレーキ操作が必要となります。メカニズムの構造上微妙なブレーキの利き具合が変わっています。テープがたるまないようにうまく左・右リールでのブレーキ調整をしています。ブレーキドラムとの圧接圧力もバランスを取りながら動作していますので点検・修理時には注意が必要です。
白っぽいフエルトが元の部品です。黒色のフエルトが今回採用した羊毛フエルトです。ブレーキメカニズムの微調整によりブレーキ機構が問題ない程度まで調整しました。接着剤としてはゴム系接着剤 ボンドG17 の使用を推奨します。ボンドも経年劣化する接着剤です。接着剤使用においては製造後新しいものを使ってください。風を引いた接着剤では接着力の低下があります。100均で購入した20ml の小さいサイズの接着剤です。
交換したフエルトは納得のいくブレーキ特性は得られませんでした。最終的にはブレーキシューを天然皮革に交換しています。革の厚みにも注意をしないとブレーキ調整は簡単な作業ではありません。天然皮革入手策としては皮革クラフトショップで入手は可能と思います。安価な皮革の切れ端を探すことです。東急ハンズのようなお店で見つけることができます。このように骨董品機器の修復作業ではあらゆる分野を視野に入れなければ代用品の確保はできません。
やはり天然皮革であればブレーキの利き具合は安定しています。
今回入手できた天然皮革は元のフエルトより厚みがあり 黒色ピアノ線のT型スプリングを曲げてストローク調整をしました。
各ヘッド構造
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ヘッドブロック |
HALF TRACK とし明記してあり ヘッドの構造を見ますとフルトラックヘッドが搭載されていません。この時点で購入選択ミスが判明しました。
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TC 707MC 部品取り機 簡単に取り外せるヘッドブロック |
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HALF TRACK HEAD 構造 |
消去ヘッドはフェライトヘッドで2トラック用の消去ヘッドです。TC-707S(SD)用と共通部品と思います。ヘッドからの端子数は3端子構造で片側のヘッドしか配線されておりません。間違いなく2トラックヘッド構造で片チャンネルで使用されています。この時点で確信しました。ハーフトラック構造です。
通常のヘッドブロックでは付属していない部品があります。磁気テープにアルミテープが接着されている場合テープ走行中にアルミテープを検出するセンサーが取り付けられています。SONY βビデオデッキでテープの終端を検出する方法です。VHS方式ではテープの終端はリーダーテープとして光を通過できる半透明のテープが使われています。灯台のような光源がテープエンドでセンサーが感知し停止させる構造でした。βテープ両終端にはアルミ箔が接着してありアルミ箔でコイルのQ変化を検出するセンサーが搭載されています。センシングテープで導通を検出するタイプと異なり テープと非接触で検出するセンサーです。画像では判明しにくいですが右中央にある円形の黒色の部品です。センサー基板は下部画像右上部にある基板です。
上図のヘッドブロックを分解画像は部品取り機として入手したものです。同じ TC 707MC ですが 相当使い込まれていました。ヘッド構造は TC 707S と同じでありステレオ用ですが片チャンネルしか配線してありません。
このように業務用の機器の場合 ヘッドブロックの供給であれば マイナスドライバーで2本のねじを外すことにより現場では簡単な作業で元の特性が得られる構造です。
前面メカニズム構造
3モーター構造のメカニズムです。1モーターと異なりリンク機構部品点数は多くありません。この機種はACモーター構造であるため 50Hz,60Hz 電源周波数に同期して回転するACモーターです。特にキャプスタンモーターは回転が正確でないとテープ走行に影響があります。憶測ですがキャプスタンモーターはヒステリシスシンクロナスモーター構造と思います。インダクションモーターであれば負荷変動・電圧変動により回転スピードが若干ですが変化する構造です。電力会社の周波数は現在コンピューターで制御されておりほとんど周波数変化は発生しません。テープスピードは19cm/s , 9.5cm/sスピード構造です。19cm/s時はモーターは4極モーターとして働き 9.5cm/s 時は8極モーターとして動作していると思います。
余談ですがTC-9400A の販売時期に似通った AKAI GX-280D-SS 4Tr-4Ch デッキではキャプスタンモーターはダイレクトドライブモーターが採用されており フライホイルがありません。必然的にキャプスタンドライブベルトは使われていません。モーターの回転子がフライホイルの役割でありアウターローター構造です。電源周波数同期ではなく回転数制御はACサーボモーターでスピード調整ができる構造です。そのためサイクル交換作業は発生しません。しかし進相コンデンサー容量変更は発生します。変更は後部パネルにあるスライドスイッチで切り替えるため簡単な作業です。左・右リールモーターも構造が異なりアウターローターACモーターです。配線は職人的な作業が見受けられます。結束されている束線は蝋引き糸1本で間隔を開けながら結束されています。各ヘッドはチャンネル数は異なりますがTC-9400A と同様ののフェライトヘッドが搭載されています。
TC-707MC では内部にサイクル交換用50Hzモータープーリーは機器内部に保管されていませんでした。このような骨董品機器ですとACモーター駆動方式であれば使用される場所により周波数が変わればサイクル交換という作業が発生します。このデッキであれば50Hz地区では回転数が遅くなりテープスピードの互換性は取れません。骨董品で遊ぶ場合には注意が必要です。モータープーリーの入手が可能であれば遊ぶことができると思います。
特に各社のデッキにおいてACモーター駆動のメカニズムの場合は周波数による特性違いを知っておかなければなりません。機種により変更方法は異なりますので確認・注意願います。直流サーボモーター・ブラシレスサーボモーターであればサイクル交換は発生しません。
50Hz,60Hz サイクル交換
TC-707MC の場合はサイクル交換手順として モータープーリーの交換、進相コンデンサーの容量値変更作業が必要です。50Hzの場合キャプスタンモーター2μF進相ブロックコンデンサーの配線を隣の端子にジャンパーします。又周波数違いによりモータープリーの直径が異なるため キャプスタンドライブのベルト張力が変化します。それを補正するためキャプスタンモーターのシャシー取り付け位置の変更が必要です。
キャプスタンモーターの進相コンデンサーは 上図供給リール右下にあるコンデンサーです。
主要部品としては 左右ダイレクトドライブリールモーターが取り付けられています。リールを取り付けるターンテーブルは削り出しアルミ材で精度のよいターンテーブルが取り付けられています。ターンテーブルを取り付ける台としてドラム状のブレーキドラムがあり リール台高さ調整はこのドラム取り付けねじを緩めてリールモーターシャフト取り付け位置調整でリール台高さを調整します。よほどのことがない限り調整作業は発生しません。
メカニズムシャーシー両側中央部には電磁ソレノイドが取り付けられており右側は ピンチローラー圧接用です。
左側の電磁ソレノイドは ブレーキ解除用で通常動作しない場合はスプリングで強制的にブレーキドラムにブレーキシューを圧接する構造です。動作時は電磁ソレノイドが働きブレーキ解除用として動作します。
もう一か所不可解な表示がありました。操作パネルにあるスイッチ TAPE SHIFT と記載されているボタンがあります。別のデッキで言い換えれば CUE スイッチボタンです。早送り・巻き戻し時にテープはガイド金具によりヘッド面に接触していませんが キュー出しの時にこの金具をひっこめる役割で アンプからキュルキュル音を出すためのスイッチで電磁ソレノイドを制御しています。このスイッチ操作は 停止時・早送り時・巻き戻し時 に作動します。
余談ですが TC-6635 はキャプスタンドライブはアイドラー駆動です。50Hz の場合はキャプスタン軸に50Hz用スリーブを取り付ける構造で ヘッドカバー内部にスリーブが内蔵されていました。普及品のテープデッキでありテープスピードが3種類選択できる構造で 安価なレコードプレヤーでは段車とアイドラーによりターンテーブルを駆動構造です。同じような構造であり 段車のモータープーリーにゴムタイヤ構造のアイドラーからフライホイルに動力を伝達する方法です。アイドラー表面のゴム劣化によりうまく動力が伝わらず 古くなるとスリップを起こし安定したテープスピードが得られません。
このように1モーターメカニズムと3モーターメカニズムには基本的な構造の相違があります。やはり高級機種・プロが使用するようなメカニズムは経年劣化が少なく 安定した特性が得られます。
裏面メカニズム構造
後部からの画像です。大きく目立つ部品としては3モーター構造によるACモーターが多くの場所を占領しています。画像中央部かキャプスタンモーターで冷却ファンが取り付けられています。左右に見えるのがリールと直結されているリールモーターです。このリールモーター左右では回転する方向が異なっています。正面から見た場合左側のリールモーターは供給側(サプライリール側)と呼ばれています。回転方向は時計回り方向に回転します。
反対側のリールモーターは右側で巻き取り側(テイクアップリール側)と呼ばれています。モーターの回転方向は反時計回りで回転します。
後部側からの画像では右側が供給側 左側が巻取り側となりますので注意ください。
中央のキャプスタンモーター下部にある電磁ソレノイドは TAPE SHIFT 駆動用です。
ここでこのリールモーターの働きについて簡単に解説します。
録音・再生時にはキャプスタン軸とピンチローラーの圧接によりテープは一定速度で走行します。供給側のリールからは一定の速度でテープが送り出されることが判明します。ここでヘッド面でのテープ圧接構造により供給リール側では走行するテープに弱い力のブレーキをかけなければ安定したテープ送出ができません。このブレーキの力がテープ供給側と反対の力を発生するのが供給側のリールモーターの働きです。そのため逆回転方向ですので時計回りの回転力が発生します。これが電気ブレーキ構造といわれます。モーター構造は異なりますが電車などでは回生ブレーキと呼ばれています。このリールモーターは交流100Vで回転するモーターです。ブレーキの力を調整するのにこのモーターに加わる電圧を降下させて回転トルクを下げる部品が抵抗器です。巻線型の大容量の抵抗器が使用されており 抵抗値を可変してモーターの回転力を調整します。
これがバックテンションの調整です。この調整によりテープが引っ張られ各ヘッド接触面に圧接することになります。本体後部上側に取り付けられています。発熱があるため放熱のよい場所に取り付けられています。
巻取りリール側のモーターの働きについては各ヘッドを通過したテープは一定の速度で送り出されてきます。この送り出されてくるテープを弱い回転力でリールにテープを巻き取ります。大きな回転力で巻き取った場合 テープに無理な力が加わりテープが伸びることも考えられます。又テープスピードも引っ張る力が大きくなりテープスピードも安定しません。
これらの理由により巻取り側の力を調整しなければなりません。この調整がテイクアップトルク調整と呼ばれます。モーターの回転方向は反時計回りとなります。調整する部品は供給側と同じ形状の抵抗器を調整して既定の回転トルクとなるように調整します。回転トルク測定にはバネはかりで測定します。
各リールモーターに加わる電圧は録音・再生時にはパワートランスで60V程度に降圧された電圧で動作しています。
早送り・巻き戻しの時には抵抗器で電圧をドロップさせずに AC100Vモーターとして働きますので大きな力が発生します。モーター回転方向は変化しません。
1モーター仕様の同年代に製造されたテープデッキ TC-6635 の構造はヘッド面テープ圧接はテープパッドといわれる部品によりフエルト面がバネの力で走行しているテープをヘッド面に圧接する構造です。そのため供給側のリールはバックテンションとして簡単なブレーキ機構で構成されています。
これと同様の構造はオープンリールより後の開発となりますが フィリップスが開発したコンパクトカセットテープが同じ構造をしています。生テープが収納されているカセットケース内にテープパッドのフエルトが板バネに接着されており ヘッド面に圧接する構造です。開発当時はテープスピード(4.8cm/sec)はオープンリールに比較すると遅いため 語学教育用程度の活用しかできなかったのですが 使い勝手が良いためその後爆発的に販売が伸びています。周波数特性も改善され生テープにおいても改良が加えられ HI-FI 領域まで進歩しました。又ステレオ構造に発展しており チャンネル間クロストーク特性は悪いですが モノラル・ステレオでの互換性は良く オープンリールのようにトラック違いによる互換性が取れないのとは異なります。
元々カセットテープは2ヘッド構造が基本ですが テープ収納カセットの開口部をうまく使い3ヘッド,オートリバース機能を持った商品まで開発されています。又テープ種違いによるバイアス・イコライザーも自動判別できる構造です。これらの機能違いにより使い勝手が悪いオープンリールテープは必然的に衰退していきました。1980年前後の時代での出来事と思います。Nakamichi 700 ではデュアルキャプスタン,3ヘッド構造になりました。フィリップスのカセット規格の基本を崩さず進歩しています。カセットテープは根強い人気があります。一般的なお年寄達の趣味であるカラオケなど用として音声多重ミュージックテープもいまだに販売されています。ジャンルは演歌がほとんどです。小生は勝手ながらこのグループには属しません。時間があれば骨董品オーディオ機器を修復しています。
ちょっと脱線しました。元に戻します。
巻取り側リールではスリップ機構と呼ばれる巻取りリールと 常時回転するディスクの間にフエルトが挟まれておりバネの圧力調整で圧接する力を変化させて一定の弱い回転力を得る構造です。又早送り・巻き戻し時にはリールの回転力を変化させる複雑な構造で動作します。
3モーター構造では電気的に回転トルクを可変しますので簡単な構造となりますが電気的制御が必要です。これらの動作を制御する基板がシステムコントロール基板と呼ばれます。
デッキ後部上面構造
画像上部右側に取り付けられている部品が回転トルク調整するための巻線抵抗器です。抵抗体上にあるスライド金具の取り付け位置を可変することにより各リールモーターのトルク調整します。
左下がシステムコントロール基板です。中央には電源トランスが搭載されています。
リールモーターのサイクル交換に使用する外付けコンデンサーは大型巻線抵抗器下のラグ端子板に取り付けられており ジャンパー配線を変更する構造です。
システムコントロール基板
左の画像はシステムコントロール基板 部品取り付け面です。
どの部品が何の働きをするかが不明であり サービスマニュアルも入手できていないことにより これからの 動作回路解読しなければ 修復・調整作業を進めることができません。各リレーには動作内容を記入しシールを張り付けています。リレーシーケンスと半導体シーケンスが結合されて動作しています。
大きな故障が発生していないことを祈りつつ 多難な船出となりました。
一応ブレーキ機構の修復でテープは走行できるようになりましたがアンプとの接続がうまくできません。頭のの痛い事柄です。
一部改造した入・出力端子
使用しているステレオアンプは真空管式です。このテープデッキは放送設備と接続することを主として設計されていますので通常のステレオと接続するコネクターの種類が異なります。ステレオはRCAピンプラクケーブルで接続しますがこの機種は標準プラク接続仕様です。信号受け渡しがステレオではなくモノラルです。うまく接続できません。取り急ぎ接続用ステレオ・モノラル混合 パッシブミキサーアダプターを作成しました。入力側はRCA端子がライン入力用としてあるのですが 出力側は標準ジャック仕様です。今回RCA端子のライン出力端子を増設しました。元々ステレオ用と同じシャシー構造ですのでシャシーを加工せずに改造できました。これらの作業によりようやくステレオ装置と接続することができました。下部の標準ジャックは右側が LINE OUT 左側が標準ジャック8Ω EXT SP 接続端子です。
ただモニターアンプが搭載されていましたが 出力される音は歪が多く使い物になりません。このモニターアンプも並行して修復します。
これらの改造により何とか通常のテープデッキ修復作業と同等の環境が作成できました。ちょっと回り道作業です。
録音されたテープに2Tr・モノラル仕様の生テープがなく 新たに録音・再生作業中に時々テープ走行が停止・動作を繰り返す問題に突き当たりました。
システムコントロール基板の修復
回路解析のためにシステムコントロール基板をデジカメで撮影し プリンターでA4に拡大し回路解析作業の始まりです。長時間にわたる作業内容です。サービスマニュアルがあればこのような作業の必要はありません。
症状として録音・再生モードにおいて1時間程度で時々発生したり 時には数時間正常な場合もあります。一番厄介な故障症状修理です。
一応定番のトランジスター マイグレーション・ウィスカ症状を疑り各小電力トランジスターのリード線が黒く変色し酸化銀が付着しています。システムコントロール基板に多数使用されているトランジスターを見込み修理で2SC1364 は全数 2SC536N に交換しましたが 長時間エージングすると症状が発生します。一番出会いたくない厄介な故障症状です。FWD(PLAY)リレーの接点ばたつきが確認できましたので嫌な回路解析作業です。
回路動作確認作業としてアナログ回路計YEW3201型2台・デジタルテスター1台・2現象オシロスコープを準備しました。測定プローブ接続用として基板の必要箇所に新規テストポイントを取り付けました。測定ケーブルを接続して症状が出るまではエージング作業です。監視箇所はリレードライブトランジスター2箇所とドライブトランジスターコレクター波形観測です。
犯人が判明しました。FWD(PLAY)モード制御用リレー励磁コイル時々半断線症状でした。一時バイブレーターのように断続症状であったと推察できます。
リレーが動作するとDC24Vリレーで約1W弱の消費電力です。リレーコイルの温度上昇により発生する症状と思います。オシロスコープで観測すると 数100Hzのパルス波形が観測できました。パルス波による励磁力変化が発生しリレー動作が時々不安定となっていたわけです。初めてのこのようなリレー故障症状に突き当たりました。パルス波形が観測できたため回路動作解析に悩みました。一種のイグニッション動作に似通った自励発振症状です。周辺回路にはパルス波が発生する要因が見つかりません。
OMRON MY-4型DC24Vリレーは手持ちがなく 産業用DC12V 2回路用リレー(OMRON G2RL-2)を直列接続として代用リレーを作成しました。接点の取り付け位置が違いリード線を新たに取り付けています。使用されているリレーは汎用品でありオートメパーツ販売店に発注すれば入手可能な部品です。
交換後長時間エージングをしていますが時々症状は発生していません。取り外したリレーの定電圧電源による動作試験をしましたが症状は確認できませんでした。
左の画像は代用品のリレーをシステムコントロール基板に実装しました。その後長時間のエージング作業です。10時間以上エージングしていますが今のところ症状の再発は発生していません。このように代用品の安全性も考慮し現在でも部品製造メーカーに発注は可能ですが費用も必要となりますので 極力手持ち在庫品を活用しています。代用品を使用する場合はその部品の特性なども熟知しなければ代用使用することはできません。今回使用したリレーコイルの直流抵抗値はDC24Vとして使用した場合 ほとんど同じ数値でした。
後部に映り込んでいる灰色は協会色に類似したキャビネットの上蓋です。機器を使用しない保管時にはトランクのように蓋をして前面操作面が保護されています。使用されず長期保管されていたと思われ全面パネルはきれいな状態です。外観上は古典的な 2Tr モノラル・オープンリールテープレコーダの構造です。
システムコントロール回路解析にはサービスマニュアルを入手するのがベストと思います。海外サイトに TC 707S,TC 707SD サービスマニュアルがあり入手しました。モノラル仕様の TC 707MC,TC 707FC 用は見つけることができませんでした。システムコントロール回路はほとんど同一と思います。システムコントロール回路修復後であり無駄な時間を消費してしまいました。
電気特性調査
一応メカニズムが正常動作をしており 録再レベルは変化していると思いますが 録音・再生機能は働いていますので テストテープを使って再生レベル調査をしました。400Hz 0dB の 基準信号の再生レベル試験です。
下部画像は 録音・再生・バイアス ブロックごとのユニット基板です。調整箇所がシャーシーに明記されています。
調整箇所
バイアスユニット バイアス(BAIS)調整コンデンサー, ダミーコイル(DUMMY)調整
録音ユニット 録音イコライザー(REC,EQ), 録音レベル(REC LEVEL)
再生ユニット 再生イコライザー(9.5EQ,19EQ), メーターレベル(METER LEVEL)
録音時 400Hz -20dBm程度の信号をLINE入力端子に接続し LINE INPUT VR を調整してVUメーターの指示位置を 0VU にセットします。その時のLINE OUTPUT 端子の出力電圧を測定すると 0dBm(0.775V) にほぼ近くの出力電圧です。実測すると +0.5dBm の値を得ました。誤差が0.5dBですのでほぼ正常と判断しました。RECモニター時はOUTPUT VR を可変してもVUメーター指針位置は変化しません。(この時点ではライン出力負荷抵抗100KΩを接続していません)これらの調査結果からVUメーターレベルは狂っていないことが判明しました。
再生モードのVUメーターは OUTPUT VR と連動しており VUメーター指針位置はVRの調整により変化してしまいます。ここで0VUを示す時のキャリブレーション位置を探さなければなりません。TEAC X-10R では OUTPUT VR つまみ指示位置は 時計短針指示方位 3時 です。
この TC-707MC での CAL の位置を調べるには 400Hz 0dB の信号テープを再生した時に VUメーターが 0VU 位置を示すようにOUTPUT VR を調整すると VRつまみ指示位置は時計短針方位 10時 でした。
通常の録音レベル・再生レベル調整は基準信号 400Hz 正弦波信号を使って メーカーが指定するリファレンステープを使用し 0VU の位置で録音します。録音された信号を 再生した場合 CAL の位置でVUメーター指針が 0VU となるようにするのが 録音レベル調整です。調整する箇所は 録音バイアス・録音レベル調整で調整します。この機種では再生レベル調整箇所はありません。OUTPUT VR がVUメーターと連動していますので再生レベルに該当します。
TEAC X-10R のようなステレオ・リバースモードもなく モノラル構成であるため調整箇所の数は多くありません。
録音用標準テープレコード BTS 5313 T19 TEST TAPE を使って再生周波数特性を調査しましたが +1.0dB 以内の特性を確認しました。再生EQには狂いが発生していません。
再生レベル400Hz 0dB 基準信号レベルは TEAC YTT 5001A(200nWb/m) で点検・調整しました。
前面メカニズム構造
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メカニズム拡大 |
3モーター構造のメカニズムです。1モーターと異なりリンク機構部品点数は多くありません。この機種はACモーター構造であるため 50Hz,60Hz 電源周波数に同期して回転するACモーターです。特にキャプスタンモーターは回転が正確でないとテープ走行に影響があります。憶測ですがキャプスタンモーターはヒステリシスシンクロナスモーター構造と思います。インダクションモーターであれば負荷変動・電圧変動により回転スピードが若干ですが変化する構造です。電力会社の周波数は現在コンピューターで制御されておりほとんど周波数変化は発生しません。テープスピードは19cm/s , 9.5cm/sスピード構造です。19cm/s時はモーターは4極モーターとして働き 9.5cm/s 時は8極モーターとして動作していると思います。
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AKAI GX-280D-SS ダイレクトドライブACサーボモーター構造 |
TC-707MC では内部にサイクル交換用50Hzモータープーリーは機器内部に保管されていませんでした。このような骨董品機器ですとACモーター駆動方式であれば使用される場所により周波数が変わればサイクル交換という作業が発生します。このデッキであれば50Hz地区では回転数が遅くなりテープスピードの互換性は取れません。骨董品で遊ぶ場合には注意が必要です。モータープーリーの入手が可能であれば遊ぶことができると思います。
特に各社のデッキにおいてACモーター駆動のメカニズムの場合は周波数による特性違いを知っておかなければなりません。機種により変更方法は異なりますので確認・注意願います。直流サーボモーター・ブラシレスサーボモーターであればサイクル交換は発生しません。
50Hz,60Hz サイクル交換
TC-707MC の場合はサイクル交換手順として モータープーリーの交換、進相コンデンサーの容量値変更作業が必要です。50Hzの場合キャプスタンモーター2μF進相ブロックコンデンサーの配線を隣の端子にジャンパーします。又周波数違いによりモータープリーの直径が異なるため キャプスタンドライブのベルト張力が変化します。それを補正するためキャプスタンモーターのシャシー取り付け位置の変更が必要です。
キャプスタンモーターの進相コンデンサーは 上図供給リール右下にあるコンデンサーです。
主要部品としては 左右ダイレクトドライブリールモーターが取り付けられています。リールを取り付けるターンテーブルは削り出しアルミ材で精度のよいターンテーブルが取り付けられています。ターンテーブルを取り付ける台としてドラム状のブレーキドラムがあり リール台高さ調整はこのドラム取り付けねじを緩めてリールモーターシャフト取り付け位置調整でリール台高さを調整します。よほどのことがない限り調整作業は発生しません。
メカニズムシャーシー両側中央部には電磁ソレノイドが取り付けられており右側は ピンチローラー圧接用です。
左側の電磁ソレノイドは ブレーキ解除用で通常動作しない場合はスプリングで強制的にブレーキドラムにブレーキシューを圧接する構造です。動作時は電磁ソレノイドが働きブレーキ解除用として動作します。
もう一か所不可解な表示がありました。操作パネルにあるスイッチ TAPE SHIFT と記載されているボタンがあります。別のデッキで言い換えれば CUE スイッチボタンです。早送り・巻き戻し時にテープはガイド金具によりヘッド面に接触していませんが キュー出しの時にこの金具をひっこめる役割で アンプからキュルキュル音を出すためのスイッチで電磁ソレノイドを制御しています。このスイッチ操作は 停止時・早送り時・巻き戻し時 に作動します。
余談ですが TC-6635 はキャプスタンドライブはアイドラー駆動です。50Hz の場合はキャプスタン軸に50Hz用スリーブを取り付ける構造で ヘッドカバー内部にスリーブが内蔵されていました。普及品のテープデッキでありテープスピードが3種類選択できる構造で 安価なレコードプレヤーでは段車とアイドラーによりターンテーブルを駆動構造です。同じような構造であり 段車のモータープーリーにゴムタイヤ構造のアイドラーからフライホイルに動力を伝達する方法です。アイドラー表面のゴム劣化によりうまく動力が伝わらず 古くなるとスリップを起こし安定したテープスピードが得られません。
このように1モーターメカニズムと3モーターメカニズムには基本的な構造の相違があります。やはり高級機種・プロが使用するようなメカニズムは経年劣化が少なく 安定した特性が得られます。
裏面メカニズム構造
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メカニズム後部 |
後部からの画像です。大きく目立つ部品としては3モーター構造によるACモーターが多くの場所を占領しています。画像中央部かキャプスタンモーターで冷却ファンが取り付けられています。左右に見えるのがリールと直結されているリールモーターです。このリールモーター左右では回転する方向が異なっています。正面から見た場合左側のリールモーターは供給側(サプライリール側)と呼ばれています。回転方向は時計回り方向に回転します。
反対側のリールモーターは右側で巻き取り側(テイクアップリール側)と呼ばれています。モーターの回転方向は反時計回りで回転します。
後部側からの画像では右側が供給側 左側が巻取り側となりますので注意ください。
中央のキャプスタンモーター下部にある電磁ソレノイドは TAPE SHIFT 駆動用です。
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同年代比較用 AKAI GX-280D-SS の各モーター配置 |
これがバックテンションの調整です。この調整によりテープが引っ張られ各ヘッド接触面に圧接することになります。本体後部上側に取り付けられています。発熱があるため放熱のよい場所に取り付けられています。
巻取りリール側のモーターの働きについては各ヘッドを通過したテープは一定の速度で送り出されてきます。この送り出されてくるテープを弱い回転力でリールにテープを巻き取ります。大きな回転力で巻き取った場合 テープに無理な力が加わりテープが伸びることも考えられます。又テープスピードも引っ張る力が大きくなりテープスピードも安定しません。
これらの理由により巻取り側の力を調整しなければなりません。この調整がテイクアップトルク調整と呼ばれます。モーターの回転方向は反時計回りとなります。調整する部品は供給側と同じ形状の抵抗器を調整して既定の回転トルクとなるように調整します。回転トルク測定にはバネはかりで測定します。
各リールモーターに加わる電圧は録音・再生時にはパワートランスで60V程度に降圧された電圧で動作しています。
早送り・巻き戻しの時には抵抗器で電圧をドロップさせずに AC100Vモーターとして働きますので大きな力が発生します。モーター回転方向は変化しません。
1モーター仕様の同年代に製造されたテープデッキ TC-6635 の構造はヘッド面テープ圧接はテープパッドといわれる部品によりフエルト面がバネの力で走行しているテープをヘッド面に圧接する構造です。そのため供給側のリールはバックテンションとして簡単なブレーキ機構で構成されています。
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カセットテープ構造 |
元々カセットテープは2ヘッド構造が基本ですが テープ収納カセットの開口部をうまく使い3ヘッド,オートリバース機能を持った商品まで開発されています。又テープ種違いによるバイアス・イコライザーも自動判別できる構造です。これらの機能違いにより使い勝手が悪いオープンリールテープは必然的に衰退していきました。1980年前後の時代での出来事と思います。Nakamichi 700 ではデュアルキャプスタン,3ヘッド構造になりました。フィリップスのカセット規格の基本を崩さず進歩しています。カセットテープは根強い人気があります。一般的なお年寄達の趣味であるカラオケなど用として音声多重ミュージックテープもいまだに販売されています。ジャンルは演歌がほとんどです。小生は勝手ながらこのグループには属しません。時間があれば骨董品オーディオ機器を修復しています。
ちょっと脱線しました。元に戻します。
巻取り側リールではスリップ機構と呼ばれる巻取りリールと 常時回転するディスクの間にフエルトが挟まれておりバネの圧力調整で圧接する力を変化させて一定の弱い回転力を得る構造です。又早送り・巻き戻し時にはリールの回転力を変化させる複雑な構造で動作します。
3モーター構造では電気的に回転トルクを可変しますので簡単な構造となりますが電気的制御が必要です。これらの動作を制御する基板がシステムコントロール基板と呼ばれます。
デッキ後部上面構造
画像上部右側に取り付けられている部品が回転トルク調整するための巻線抵抗器です。抵抗体上にあるスライド金具の取り付け位置を可変することにより各リールモーターのトルク調整します。
左下がシステムコントロール基板です。中央には電源トランスが搭載されています。
リールモーターのサイクル交換に使用する外付けコンデンサーは大型巻線抵抗器下のラグ端子板に取り付けられており ジャンパー配線を変更する構造です。
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メカニズム後部上 |
システムコントロール基板
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システムコントロール基板 |
左の画像はシステムコントロール基板 部品取り付け面です。
どの部品が何の働きをするかが不明であり サービスマニュアルも入手できていないことにより これからの 動作回路解読しなければ 修復・調整作業を進めることができません。各リレーには動作内容を記入しシールを張り付けています。リレーシーケンスと半導体シーケンスが結合されて動作しています。
大きな故障が発生していないことを祈りつつ 多難な船出となりました。
一応ブレーキ機構の修復でテープは走行できるようになりましたがアンプとの接続がうまくできません。頭のの痛い事柄です。
一部改造した入・出力端子
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入出力端子の改造 |
ただモニターアンプが搭載されていましたが 出力される音は歪が多く使い物になりません。このモニターアンプも並行して修復します。
これらの改造により何とか通常のテープデッキ修復作業と同等の環境が作成できました。ちょっと回り道作業です。
録音されたテープに2Tr・モノラル仕様の生テープがなく 新たに録音・再生作業中に時々テープ走行が停止・動作を繰り返す問題に突き当たりました。
システムコントロール基板の修復
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システムコントロール基板の解析 |
回路解析のためにシステムコントロール基板をデジカメで撮影し プリンターでA4に拡大し回路解析作業の始まりです。長時間にわたる作業内容です。サービスマニュアルがあればこのような作業の必要はありません。
症状として録音・再生モードにおいて1時間程度で時々発生したり 時には数時間正常な場合もあります。一番厄介な故障症状修理です。
一応定番のトランジスター マイグレーション・ウィスカ症状を疑り各小電力トランジスターのリード線が黒く変色し酸化銀が付着しています。システムコントロール基板に多数使用されているトランジスターを見込み修理で2SC1364 は全数 2SC536N に交換しましたが 長時間エージングすると症状が発生します。一番出会いたくない厄介な故障症状です。FWD(PLAY)リレーの接点ばたつきが確認できましたので嫌な回路解析作業です。
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システムコントロール基板の測定 |
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不良であったDC24Vリレー |
リレーが動作するとDC24Vリレーで約1W弱の消費電力です。リレーコイルの温度上昇により発生する症状と思います。オシロスコープで観測すると 数100Hzのパルス波形が観測できました。パルス波による励磁力変化が発生しリレー動作が時々不安定となっていたわけです。初めてのこのようなリレー故障症状に突き当たりました。パルス波形が観測できたため回路動作解析に悩みました。一種のイグニッション動作に似通った自励発振症状です。周辺回路にはパルス波が発生する要因が見つかりません。
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修復されたシステムコントロール基板 |
交換後長時間エージングをしていますが時々症状は発生していません。取り外したリレーの定電圧電源による動作試験をしましたが症状は確認できませんでした。
左の画像は代用品のリレーをシステムコントロール基板に実装しました。その後長時間のエージング作業です。10時間以上エージングしていますが今のところ症状の再発は発生していません。このように代用品の安全性も考慮し現在でも部品製造メーカーに発注は可能ですが費用も必要となりますので 極力手持ち在庫品を活用しています。代用品を使用する場合はその部品の特性なども熟知しなければ代用使用することはできません。今回使用したリレーコイルの直流抵抗値はDC24Vとして使用した場合 ほとんど同じ数値でした。
後部に映り込んでいる灰色は協会色に類似したキャビネットの上蓋です。機器を使用しない保管時にはトランクのように蓋をして前面操作面が保護されています。使用されず長期保管されていたと思われ全面パネルはきれいな状態です。外観上は古典的な 2Tr モノラル・オープンリールテープレコーダの構造です。
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入手できた TC 707S,TC 707SD システムコントロール基板回路図 |
システムコントロール回路解析にはサービスマニュアルを入手するのがベストと思います。海外サイトに TC 707S,TC 707SD サービスマニュアルがあり入手しました。モノラル仕様の TC 707MC,TC 707FC 用は見つけることができませんでした。システムコントロール回路はほとんど同一と思います。システムコントロール回路修復後であり無駄な時間を消費してしまいました。
電気特性調査
一応メカニズムが正常動作をしており 録再レベルは変化していると思いますが 録音・再生機能は働いていますので テストテープを使って再生レベル調査をしました。400Hz 0dB の 基準信号の再生レベル試験です。
今回の修復では機器はSONY製ですので 準備するテストテープは アライメントテープ(テストテープ) SONY J-19-F2 を準備となります。しかしが所有していません。他社製所有しているテストテープを使用しての検証作業となります。
下部画像は 録音・再生・バイアス ブロックごとのユニット基板です。調整箇所がシャーシーに明記されています。
調整箇所
バイアスユニット バイアス(BAIS)調整コンデンサー, ダミーコイル(DUMMY)調整
録音ユニット 録音イコライザー(REC,EQ), 録音レベル(REC LEVEL)
再生ユニット 再生イコライザー(9.5EQ,19EQ), メーターレベル(METER LEVEL)
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アンプ基盤調整箇所 |
録音時 400Hz -20dBm程度の信号をLINE入力端子に接続し LINE INPUT VR を調整してVUメーターの指示位置を 0VU にセットします。その時のLINE OUTPUT 端子の出力電圧を測定すると 0dBm(0.775V) にほぼ近くの出力電圧です。実測すると +0.5dBm の値を得ました。誤差が0.5dBですのでほぼ正常と判断しました。RECモニター時はOUTPUT VR を可変してもVUメーター指針位置は変化しません。(この時点ではライン出力負荷抵抗100KΩを接続していません)これらの調査結果からVUメーターレベルは狂っていないことが判明しました。
再生モードのVUメーターは OUTPUT VR と連動しており VUメーター指針位置はVRの調整により変化してしまいます。ここで0VUを示す時のキャリブレーション位置を探さなければなりません。TEAC X-10R では OUTPUT VR つまみ指示位置は 時計短針指示方位 3時 です。
この TC-707MC での CAL の位置を調べるには 400Hz 0dB の信号テープを再生した時に VUメーターが 0VU 位置を示すようにOUTPUT VR を調整すると VRつまみ指示位置は時計短針方位 10時 でした。
通常の録音レベル・再生レベル調整は基準信号 400Hz 正弦波信号を使って メーカーが指定するリファレンステープを使用し 0VU の位置で録音します。録音された信号を 再生した場合 CAL の位置でVUメーター指針が 0VU となるようにするのが 録音レベル調整です。調整する箇所は 録音バイアス・録音レベル調整で調整します。この機種では再生レベル調整箇所はありません。OUTPUT VR がVUメーターと連動していますので再生レベルに該当します。
TEAC X-10R のようなステレオ・リバースモードもなく モノラル構成であるため調整箇所の数は多くありません。
録音用標準テープレコード BTS 5313 T19 TEST TAPE を使って再生周波数特性を調査しましたが +1.0dB 以内の特性を確認しました。再生EQには狂いが発生していません。
再生レベル400Hz 0dB 基準信号レベルは TEAC YTT 5001A(200nWb/m) で点検・調整しました。
TEAC TEST TAPE YTT 1003 PLAYBACK ALIGEMENT TAPE は 400Hz 185nWb/m が記録されています。当時市販されている生テープの改良・進化と共にローノイズ・ハイアウトプット型が主流になっていました。そのためレベルセット信号として TEAC YTT 5001A(200nWb/m) を使っていると思います。レベル差をデシベルで表せば +1.0dB ですので調整する場合換算作業が発生します。
今回録音・再生レベル調整作業は実施しておりません。録音テストに使用しているテープも骨董品であり録音レベルと再生レベルの差は 3.0dB 程度発生しています。録音レベルを+3dBとすると再生レベルが0dBm(0.775V) になります。 OUTPUT VR の指示位置は10時です。バイアス・録音レベルを調整すれば誤差がなくなると思いますが 調整は先送りとしました。
録音テストに使用したリファレンステープはメーカー指定のテープではありません。生テープ製造終了が国内では一番近年近くまで製造された プロ仕様品 Maxell PM50 シリーズのテープを採用し調整しています。このシリーズの生テープであれは根気よく探せば現在でも新品・未使用品を見つけ出すこともできます。
BTS 5313 T19 19cm/sec TEST TAPE の仕様 テープ番号722011
今回録音・再生レベル調整作業は実施しておりません。録音テストに使用しているテープも骨董品であり録音レベルと再生レベルの差は 3.0dB 程度発生しています。録音レベルを+3dBとすると再生レベルが0dBm(0.775V) になります。 OUTPUT VR の指示位置は10時です。バイアス・録音レベルを調整すれば誤差がなくなると思いますが 調整は先送りとしました。
録音テストに使用したリファレンステープはメーカー指定のテープではありません。生テープ製造終了が国内では一番近年近くまで製造された プロ仕様品 Maxell PM50 シリーズのテープを採用し調整しています。このシリーズの生テープであれは根気よく探せば現在でも新品・未使用品を見つけ出すこともできます。
BTS 5313 T19 19cm/sec TEST TAPE の仕様 テープ番号722011
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BTS5313 T19 TEST TAPE |
作成 電波技術協会 日本語名称 録音用標準テープレコード
第一区分 レベル規制信号 周波数 400Hz 偏差 0dB
第二区分 角度・周波数特性点検信号
周波数 12500Hz 偏差 +0.3dB
7000Hz 偏差 +0.1dB
400Hz 偏差 0 dB
80Hz 偏差 -0.1dB
第四区分 周波数特性規制信号
周波数 12500Hz 偏差 +0.3dB
10000Hz 偏差 +0.1dB
7000Hz 偏差 +0.1dB
5000Hz 偏差 +0.1dB
3000Hz 偏差 -0.1dB
1000Hz 偏差 -0.1dB
400Hz 偏差 -0.1dB
200Hz 偏差 0 dB
TC-707MC 測定調査結果の特性・レベル数値を得ることができました。製造メーカー違い・機器の製造された時代により 調整数値は異なっている場合もあります。開発された時代により生テープも年々改良され特性もよくなっていますので参考程度と解釈ください。
特にカセットテープレコーダー全盛時代になると 様々な良質の生テープが開発されました。それとは反対にオープンリールは衰退し一部マニアが使用する程度となっています。小生も扱いが簡単でありなおかつ 生テープの価格が安価ななカセットテープに移行しています。当時テープ種が多く選択に悩みました。同時期にはアナログLPレコード盤からCD(コンパクトディスク)が開発され移行時期でもあります。
余談ですがその時代に使用していたカセットデッキは2ヘッド仕様です。多段積み可能なオーディオラックに収納できる3U程度の本体高さです。水平ローディング・水平メカニズム・大型フライホイル搭載品にこだわっています。元々フェライトヘッドが使用されていましたが聴感上歪が多く S/N比を稼ぐオーバー録音に適していません。パーマロイヘッドに改造しています。フェライトヘッドは摩耗が少ないとのメーカーからの売り文句でしたが 従来のヘッドと比較すると音質の違いが判明します。個人的な感覚となりますがあえてパーマロイヘッドにこだわりました。駆動モーターは回転数が安定しているクオーツロックサーボではありませんが ほぼ同等のPLLサーボモーターでした。その後の垂直メカニズム、オートリバース機はフライホイルの直径が小さく機械的特性が気に食いません。あえて導入せずにメンテナンスをしながら長期間使用しました。そのデッキも山小屋で長期間休眠中です。現役復活の可能性は少ないと思います。
現代ではPCからの音源が主体ですが 単三型充電池一本で動作する ヤマハ設計、手のひらサイズ小型ICレコーダーを愛用しています。MP3,WAVE ファイルで長時間再生できるため カセットテープを使う必要がないからです。元々の音源はLPレコード・CDがほとんどであり 音楽ファイルとしてHDDに保管しています。
オープンリールデッキは近年までお蔵入り状態でした。
接続しているステレオシステムは真空管式であり 当時と現在とほぼ変わらないシステムです。 能率のよいスピーカーシステムが接続してあります。現役で不具合もなく真空管システムで運用しています。
メカニズムの特性調査
キャプスタンモーターはACモーターです。DCサーボモーターと異なりテープスピードの調整はできません。ただ交流電圧で動作しているため モーター軸トルクはDCモーターに比較して大きいと思います。
メカニズムの動作特性に使用したテストテープは Technics AUDIO TEST TAPE O-W 190 です。
19cm/s FULL TRACKで記録されている 3000Hz TAPE SPEED/FLUTTER 測定用のテストテープを使用しました。
測定器は LEADER LFM-39A 並列接続として周波数カウンター タケダ理研 TR-5142
調査結果
TC-707MC HALF TRACK
スピード偏差 +0.6% (3018Hz前後を観測)
ワウフラッター 0.014~0.016% (レンジ 0.1%)
TC-707FC FULL TRACK
スピード偏差 +0.16% (3005Hz前後を観測)
ワウフラッター 0.018~0.022% (レンジ 0.1%)
第一区分 レベル規制信号 周波数 400Hz 偏差 0dB
第二区分 角度・周波数特性点検信号
周波数 12500Hz 偏差 +0.3dB
7000Hz 偏差 +0.1dB
400Hz 偏差 0 dB
80Hz 偏差 -0.1dB
第四区分 周波数特性規制信号
周波数 12500Hz 偏差 +0.3dB
10000Hz 偏差 +0.1dB
7000Hz 偏差 +0.1dB
5000Hz 偏差 +0.1dB
3000Hz 偏差 -0.1dB
1000Hz 偏差 -0.1dB
400Hz 偏差 -0.1dB
200Hz 偏差 0 dB
80Hz 偏差 -0.1dB
40Hz 偏差 0 dB
昭和〇〇年6月24日校正
上記数字は添付されていた校正表の数値です。第一区分信号レベル 0dB 以外は -10dB のレベルです。製造後数十年経過していますので製造メーカーのような正規の調整にはテストテープとして使用はできません。自己校正しましたら -3dB ほどレベル低下が発生しています。このようなテストテープには使用期限(レベル・特性保証期限)があります。プロ仕様では使用期限が過ぎればテストテープは廃棄となります。その都度保証期間内の校正表及びシリアル番号が記入されたテストテープで調整作業をしています。使用期限が過ぎたテストテープのメーカー再校正依頼では費用は新品と変わらない場合もあると思います。
TEAC TEST TAPE YTT-5001A の仕様
作成 TEAC CORPORATION 作成年月日 シリアル番号の記入なし
LEVEL SET 400Hz,0dB(200pWb/mm) (19.05cm/sec)
PRODUCT OF JAPAN
このテストテープも製造後年数が経過していますので基準レベルの低下が -1dB 発生しています。
40Hz 偏差 0 dB
昭和〇〇年6月24日校正
上記数字は添付されていた校正表の数値です。第一区分信号レベル 0dB 以外は -10dB のレベルです。製造後数十年経過していますので製造メーカーのような正規の調整にはテストテープとして使用はできません。自己校正しましたら -3dB ほどレベル低下が発生しています。このようなテストテープには使用期限(レベル・特性保証期限)があります。プロ仕様では使用期限が過ぎればテストテープは廃棄となります。その都度保証期間内の校正表及びシリアル番号が記入されたテストテープで調整作業をしています。使用期限が過ぎたテストテープのメーカー再校正依頼では費用は新品と変わらない場合もあると思います。
TEAC TEST TAPE YTT-5001A の仕様
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TEAC TEST TAPE YTT-5001A 400Hz 0dB LEVEL SET |
作成 TEAC CORPORATION 作成年月日 シリアル番号の記入なし
LEVEL SET 400Hz,0dB(200pWb/mm) (19.05cm/sec)
PRODUCT OF JAPAN
このテストテープも製造後年数が経過していますので基準レベルの低下が -1dB 発生しています。
MRLの正規テストテープ 1000Hz 250nWb/m と校正した副標準テープを所有していますので 自己校正を実施しています。使用前自己校正を実施すれば 古いテストテープでも誤差を把握すれば使用することができます。道楽作業での上記テストテープを使っての 修復・調整作業は あくまでも自己責任・判断です。所有している.正規のテストテープは全数1/4インチテープ フルトラックで記録されています。
その後調査結果 SONY アライメントテープ J-19-F2 に記録されている 400Hz の信号は 185nWb/m です。同等のテストテープ TEAC YTT-1003 NAB(1965)にも同用の 400Hz 0dB 信号が記録されていますが 記録レベルも同じく 185nWb/m です。電波技術協会 BTS 5313-T19 テスト・テープは確認は取れていませんが同じく 400Hz 0dB 信号は 185nWb/m と思います。その後時代が進むと生テープの改良によりローノイズ・ハイアウトプット型の音楽専用テープ販売主流となり多用されます。そのニーズに合わせ TEAC YTT-5001A 200nWb/m の基準値に変更となったと推察します。レベル差は 1.0dB ですので使用するテストテープの基準値を把握する必要があります。現在において当時作成されたテストテープ類は経年劣化・変化が発生しており 正規の調整はできないと思います。テストテープの校正作業が必要です。
参考記載
国内製造メーカーとして AKAI テストテープ調査では NAB特性(1965) 250Hz,700Hz 185nWb/m と記載されています。1975年頃に販売された4チャンネルステレオ・オープンリール・ミュージックテープには 700Hz のキャリブレーション信号がテープの最初に記録されていました。(AKAI GX 280D-SS 4-ch/2-ch STEREO 付属のミュージックテープ)
TC-707MC 測定調査結果の特性・レベル数値を得ることができました。製造メーカー違い・機器の製造された時代により 調整数値は異なっている場合もあります。開発された時代により生テープも年々改良され特性もよくなっていますので参考程度と解釈ください。
特にカセットテープレコーダー全盛時代になると 様々な良質の生テープが開発されました。それとは反対にオープンリールは衰退し一部マニアが使用する程度となっています。小生も扱いが簡単でありなおかつ 生テープの価格が安価ななカセットテープに移行しています。当時テープ種が多く選択に悩みました。同時期にはアナログLPレコード盤からCD(コンパクトディスク)が開発され移行時期でもあります。
余談ですがその時代に使用していたカセットデッキは2ヘッド仕様です。多段積み可能なオーディオラックに収納できる3U程度の本体高さです。水平ローディング・水平メカニズム・大型フライホイル搭載品にこだわっています。元々フェライトヘッドが使用されていましたが聴感上歪が多く S/N比を稼ぐオーバー録音に適していません。パーマロイヘッドに改造しています。フェライトヘッドは摩耗が少ないとのメーカーからの売り文句でしたが 従来のヘッドと比較すると音質の違いが判明します。個人的な感覚となりますがあえてパーマロイヘッドにこだわりました。駆動モーターは回転数が安定しているクオーツロックサーボではありませんが ほぼ同等のPLLサーボモーターでした。その後の垂直メカニズム、オートリバース機はフライホイルの直径が小さく機械的特性が気に食いません。あえて導入せずにメンテナンスをしながら長期間使用しました。そのデッキも山小屋で長期間休眠中です。現役復活の可能性は少ないと思います。
現代ではPCからの音源が主体ですが 単三型充電池一本で動作する ヤマハ設計、手のひらサイズ小型ICレコーダーを愛用しています。MP3,WAVE ファイルで長時間再生できるため カセットテープを使う必要がないからです。元々の音源はLPレコード・CDがほとんどであり 音楽ファイルとしてHDDに保管しています。
オープンリールデッキは近年までお蔵入り状態でした。
接続しているステレオシステムは真空管式であり 当時と現在とほぼ変わらないシステムです。 能率のよいスピーカーシステムが接続してあります。現役で不具合もなく真空管システムで運用しています。
メカニズムの特性調査
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ワウ・フラッターメーター LFM-39A |
メカニズムの動作特性に使用したテストテープは Technics AUDIO TEST TAPE O-W 190 です。
19cm/s FULL TRACKで記録されている 3000Hz TAPE SPEED/FLUTTER 測定用のテストテープを使用しました。
測定器は LEADER LFM-39A 並列接続として周波数カウンター タケダ理研 TR-5142
調査結果
TC-707MC HALF TRACK
スピード偏差 +0.6% (3018Hz前後を観測)
ワウフラッター 0.014~0.016% (レンジ 0.1%)
TC-707FC FULL TRACK
スピード偏差 +0.16% (3005Hz前後を観測)
ワウフラッター 0.018~0.022% (レンジ 0.1%)
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Technics AUDIO TEST TAPE O-W 190 |
O-W 190 テストテープの仕様
シリアル番号 80421501
テープ速度 19.05cm/sec (7 1/2 inch/sec)
テープ幅 6.3mm (1/4 inch)
録音トラック フルトラック
録音信号 3000Hz 0dB
速度偏差 ±0.05%
ワウフラッター ±0.04%
シリアル番号 80421501
テープ速度 19.05cm/sec (7 1/2 inch/sec)
テープ幅 6.3mm (1/4 inch)
録音トラック フルトラック
録音信号 3000Hz 0dB
速度偏差 ±0.05%
ワウフラッター ±0.04%
上記測定結果を得ました。特性:結果としては優秀な数値です。カタログ値のスペックと比較しても見劣りはありません。現在でも通用する数値です。並列接続として周波数カウンターで周波数を測定し ワウ・フラッター計表示メーターとの誤差が発生していないことを確認しています。テープ走行位置での偏差は10Hz以内であり極端なドリフト症状は発生していませんでした。
上記特性調査に使用したテストテープはフルトラックの信号で1本づつ手作業で作成されています。ミュージックテープのように大量生産品ではありません。このテストテープと同等の働きをする副標準テープを作成するために フルトラック記録のメカニズム特性のよいデッキを探していたわけです。標準テープは高額であり市場に数多く流通しておりません。入手難です。基準となるデッキの調整信号です。
このように正規のテストテープを使い測定結果からこのデッキの特性・誤差が判明しました。高額なテストテープは常用使用するものではありません。通常の修復・調整作業では副標準テープを作成して 作成した副標準テープを常用使用します。この副標準テープを作成するために特性のよいデッキが必要な理由です。
製造工程ですら調整作業は副標準テープを使って調整されていました。最終検査時に正規のテストテープを使用し短時間使用する程度です。そのため消耗品であるテストテープ類・ブランクテープ・副標準テープは随時社内校正をパスした物しか使うことができません。規格外及び使用可能期限が到来すると廃棄となります。正規のテストテープは使用回数まで管理していました。これらの作業が製造メーカーにおける品質管理部門の仕事です。使われる測定機器類も校正シールが張り付けられており使用期限も明記されています。メーカー校正・社内校正をパスした物しか使用できません。商品品質にかかわる事柄であり 重要なヘッド調整はベテランといわれる職人技が要求されます。誰でもできる作業内容ではありません。しかも短時間に正確な作業を完了する領域です。
例えばテープスピード調整用のテープですと このデッキで作成する場合は オーディオジェネレーターからの正弦波信号は 3018Hz の信号を記録します。標準テープとの誤差はほとんど発生しません。作成したテープも測定すればほぼ同じ結果となりますので 副標準テープとして活用できるわけです。又誤差がある場合は誤差分を明記すれば誤差分を換算すれば良いわけです。現実にBTS規格テープでは校正表といわれる誤差を記入した試験成績書が添付されています。
これらの理由によりテストテープと同じフルトラック記録可能なデッキが必要な理由です。フルトラックで作成した副標準テープではデッキのトラック数が違っても各機器が調整できるわけです。現在は修復完了した TEAC X10R で副標準テープを作成して活用していますが 4Tr 2Ch 仕様ですのでトラック数の違うデッキでは使い勝手が悪くなります。又トラックごとに異なるアンプで記録するため誤差も発生します。
モニターアンプの修復
このTC-707MC は汎用テープレコーダー構造です。そのため通常のテープデッキと異なり本体から音を出すためのスピーカー(8Ω/3W 口径12cm・フェライト磁石)が内蔵されています。このスピーカーを駆動する モノラル・パワーアンプが搭載されており アンプの電源電圧はDV24V程度で動作しています。このことからパワーアンプの定格は5W/THD10%程度の出力アンプを使っていると考察できます。LINE OUT VR と MONITOR VR とは連動していますので 各VRの位置に注意しないとスピーカーからは音声が出ない場合も発生します。PB VOL アース側の端子には小さな抵抗が直列接続されており 完全には無音とはならない構造です。
左の画像がパワーアンプの基板です。
モニタースピーカからの音声は歪が多く使い物になりません。回路図がないため基板より配線図を起こしました。
TONE調整回路(TREBLE,BASS)とプリアンププ部・メインアンプ部がこの基板に搭載しています。出力トランジスターはシャーシーを放熱板として外付けされており画像にはありません。2SD291 2個がプッシュプルで動作しています。SEPPプッシュプル回路です。終段トランジスターのエミッター抵抗1Ωに発生するアイドリング電流を測定すると数mA程度です。終段出力トランジスター中点電圧(スピーカー接続点)も同じ電圧でなくバランスが崩れています。同年代ステレオアンプのメインアンプのようなOTL.OCL回路ではありません。ピュア・コンプリメンタリー接続回路とも違います。.アウトプットカップリングコンデンサー・段間接続カップリングコンデンサーも挿入されており 初段からの完全直結アンプとも異なります。簡易的なNPN-NPN ダーリントン接続2段積み回路でした。各部品の良否を確認しましたが大きな誤差はなく悩みました。最終的に電力増幅段のバイアス電流が極端に少なくバイアス電圧用ダイオード3直列接続ダイオードの種類を変えてバイアス電流を20数mAまで調整した結果 1W出力時 歪率は約0.3%まで改善できました。しかしHI-FI アンプとは言えない特性です。このあたりで妥協することにしました。
ただ近年のパワーアンプICに変更も試みましたが DC24Vで動作するバーワーアンプICは手持ちにありません。12VであればBTL接続アンプであれば 8Ω負荷で10W程度得られますがスピーカ端子をグランドレベルに接続することができませんので断念となりました。15V程度で駆動できるパワーICも試みましたが残留雑音が耳につき断念。
上記特性調査に使用したテストテープはフルトラックの信号で1本づつ手作業で作成されています。ミュージックテープのように大量生産品ではありません。このテストテープと同等の働きをする副標準テープを作成するために フルトラック記録のメカニズム特性のよいデッキを探していたわけです。標準テープは高額であり市場に数多く流通しておりません。入手難です。基準となるデッキの調整信号です。
製造工程ですら調整作業は副標準テープを使って調整されていました。最終検査時に正規のテストテープを使用し短時間使用する程度です。そのため消耗品であるテストテープ類・ブランクテープ・副標準テープは随時社内校正をパスした物しか使うことができません。規格外及び使用可能期限が到来すると廃棄となります。正規のテストテープは使用回数まで管理していました。これらの作業が製造メーカーにおける品質管理部門の仕事です。使われる測定機器類も校正シールが張り付けられており使用期限も明記されています。メーカー校正・社内校正をパスした物しか使用できません。商品品質にかかわる事柄であり 重要なヘッド調整はベテランといわれる職人技が要求されます。誰でもできる作業内容ではありません。しかも短時間に正確な作業を完了する領域です。
例えばテープスピード調整用のテープですと このデッキで作成する場合は オーディオジェネレーターからの正弦波信号は 3018Hz の信号を記録します。標準テープとの誤差はほとんど発生しません。作成したテープも測定すればほぼ同じ結果となりますので 副標準テープとして活用できるわけです。又誤差がある場合は誤差分を明記すれば誤差分を換算すれば良いわけです。現実にBTS規格テープでは校正表といわれる誤差を記入した試験成績書が添付されています。
これらの理由によりテストテープと同じフルトラック記録可能なデッキが必要な理由です。フルトラックで作成した副標準テープではデッキのトラック数が違っても各機器が調整できるわけです。現在は修復完了した TEAC X10R で副標準テープを作成して活用していますが 4Tr 2Ch 仕様ですのでトラック数の違うデッキでは使い勝手が悪くなります。又トラックごとに異なるアンプで記録するため誤差も発生します。
モニターアンプの修復
このTC-707MC は汎用テープレコーダー構造です。そのため通常のテープデッキと異なり本体から音を出すためのスピーカー(8Ω/3W 口径12cm・フェライト磁石)が内蔵されています。このスピーカーを駆動する モノラル・パワーアンプが搭載されており アンプの電源電圧はDV24V程度で動作しています。このことからパワーアンプの定格は5W/THD10%程度の出力アンプを使っていると考察できます。LINE OUT VR と MONITOR VR とは連動していますので 各VRの位置に注意しないとスピーカーからは音声が出ない場合も発生します。PB VOL アース側の端子には小さな抵抗が直列接続されており 完全には無音とはならない構造です。
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パワーアンブ基板 部品面 |
モニタースピーカからの音声は歪が多く使い物になりません。回路図がないため基板より配線図を起こしました。
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パワーアンブ基板 パターン面 |
ただ近年のパワーアンプICに変更も試みましたが DC24Vで動作するバーワーアンプICは手持ちにありません。12VであればBTL接続アンプであれば 8Ω負荷で10W程度得られますがスピーカ端子をグランドレベルに接続することができませんので断念となりました。15V程度で駆動できるパワーICも試みましたが残留雑音が耳につき断念。
その後 音歪改善として再挑戦しました。
回路図も入手できていませんので時間のかかる手作業での修復内容です。
テンションアームとガイドローラーの特徴
左の画像は供給リール側に取り付けられているガイドローラーです。この機種ではローラ部はベアリングを使っています。TEAC X-10R ではガイドローラーはリバース可能機ですので左右に取り付けられていますが軸受けはメタル構造です。このように高級機・業務用機の場合各所に耐久性がよく 多少製造コストアップとなりますが要所はしっかりとした作りです。民生品であれば1円でもコスト削減を各製造会社では取り組んでいます。業務用機は長時間安定動作を目的として設計されており 消耗部品なども簡単に交換できるような構造です。耐久性が良いため多少のオーバーホールで今日でも正常に動かすことができます。ただ特殊な部品については入手できない場合も多々発生しますが道楽作業では同等機種からの部品を移植することもあります。電子回路部品については現代でも入手は比較的簡単に入手できますので規格さえ合致すれば代替え部品を使用します。特に安全性には気を配らなければなりません。自己責任での作業です。
50年近くなる電子機器ですが電子部品の極端な劣化はこの機器修理では発生していませんでした。業者の中には手当たり次第に新品の電子部品に交換される方も見受けられます。交換した各部品の単体試験・検査をされた結果なのでしょうか。交換根拠の説明はあいまいな不明確な説明が大半です。
商品製造時であれば各部品の製造時期・納入単価により性能違いがあるのも現実です。同じ規格の部品の場合製造メーカー・品種により納入単価は大きく違っていました。その中でも消耗的な電子部品はアルミ電解コンデンサーです。この機器では ELNA 製が採用されています。基板から取り外し容量値・漏えい電流などの単体試験をしましたがほとんど正常値を示しています。手間は一緒ですので元に戻す場合新品の最近製造分の部品を取り付けるのが現状です。確かに70年代以前に製造された電解コンデンサーは液漏れ・容量抜けの部品は多数発生していました。
今回のSONY製小電力トランジスター(2SC1364)のリード線は表面が黒化しており 酸化銀が遊離しています。マイグレーション症状が見受けられますので時々症状・ランダム雑音症状などはトランジスターの不良を疑ります。これが外れれば修復に時間がかかってしまいます。今回システムコントロール基板内のリレー時々故障が該当します。このような場合トランジスターを取り外しリード線を清掃後コーティングすればこの症状を回避することは可能です。無闇に新品と交換する必要はありません。トランジスター本体部は故障していません。特に骨董品機器の場合各部品故障の仕方を熟知することが大切です。又修理時間の短縮も図れます。基板に実装したままでは各電子部品の良否判定はほぼできません。部品単体試験が必要です。又交換する部品の特性・安全性にも注意をしなければ代用使用することもできません。
2台とも実用レベルまで動作するまで修復ができました。もう少し細かな特性など調査し調整する予定です。破損個所については部品取り器・ジャンク品入手も視野に入れて探しています。ただその部品取り器も修復でき同等機種が増殖する結果ともなります。これが物を捨てられない症候群です。今話題となっているゴミ屋敷となる兆候かもしれません。今更骨董品修復できた機器は産業廃棄物・粗大ごみ扱いとして処分はしたくありません。1円でも売却できれば有価物です。産業廃棄物扱いとなりません。今後の課題としては必要な方にお譲りしたいと思います。
新規に作成した副標準テープ
自己修復品 TEAC X-10R で以前作成した副標準テープは今回 4Tr-2ch からフルトラックの正規テストテープと同じ仕様となりました。特にテープスピードについては X-10R であればキャプスタンモーターは直流モーターですのでサーボコントロールによりテープスピードは簡単に調整できますが TC-707 シリーズではACモーター駆動です。簡単にテープスピードの調整はできません。しかし正規のテストテープでもって校正したテープを作成することにより ほとんど誤差が発生していない副標準テープが作成できたわけです。テープスピードは調整できませんので誤差分を補正すれば正規テストテープと同等です。
副標準テープ作成において悩みました。規準となるレベル設定です。正規のテストテープは数種類所有していますが各テープは経年劣化が発生しており同じ信号が同じレベルになりません。基準値が異なっています。最終的に当時の規格ではありませんが比較的近年に作成された校正証明はありませんが MRL 1000Hz 0dB 250nWB/m を基準値の所有している副標準テープと各テストテープを確認しながら基準値を導き出しました。推察ですが正規品との誤差は数dB以内になっていると思います。これでもって各種テープデッキを調整しましたが不具合は発生していません。
今回も使用した生テープはMaxell PM50-5LB を使って作成しました。この生テープはプロ仕様の100番タイプのテープです。気長に探せば現在でもリールサイズが異なっていても新品の生テープは入手可能です。
各種生テープによる 400Hz 0dB(0VU)キャリブレーション信号特性調査
今回このTC-707FC はリファレンステープとして Maxell PM50 のテープを採用し バイアス・録音レベル調整しました。このテープで調整した場合、他の音楽専用テープであれば入・出力レベル変化が1dB以内となっており dbx を使用した場合でも大きな特性変化は発生しません。
録音トラックはフルトラック記録であり 副標準テープに使用する生テープ選択のため各テープの特性を調査しました。調査した生テープは製造後半世紀近くのものもあり テープの経年劣化等が発生していると思います。参考程度の記載とご理解ください。所有しているテープでの調査です。Maxell PM50 を含め下記に記載したテープ種は 近年程度のよい中古品・新古品として入手したテープです。TDK,FUJI FILM,輸入品については当時7号テープは購入していませんので調査できません。他に多品種の10号リール生テープも所有していますがこの TC-707FC には取り付けることができませんので調査外です。今回各テープのバイアス調整はしていません。バイアスを調整すれば多少良くなると思いますが民生用デッキでは細かく調整する機能はありません。
現在新品として入手できる生テープは 旧BASF,agfa 系 RMG (現RYRAL) が製造しているテープしか見当たりません。
製造されているテープ種
SM 900 AMPEX 499 同等スタジオグレード 100番タイプ
SM 911 QUANTEGY 456 同等スタジオグレード 100番タイプ
LPR 35 QUANTEGY 457 ロングプレイタイプ 150番タイプ
近年製造分テープではテープ走行系の汚れも少なく テープのドロップアウトも発生しにくいテープであると思いますがちょっと高額でありなかなか手が出ません。入手可能であれば QUANTEGY 456 未開封品を探します。AMPEX 456 表示テープはQUANTEGY 456 より製造後年月が経過していますのでちょっと敬遠します。国産品であればMaxell PM50 系の未使用品もしくは程度のよいスタジオ・放送局放出品を狙います。
Scotch 111 はアセテートベース・スタンダードレンジ生テープとして1970年以前から70年初期にかけて各社のリファレンステープとして使用されたテープです。やはり感度は悪いですがモニター出力が 0VU LINE OUT 電圧を各調査するテープ 0dBm/0.775V となるように各テープ録音入力レベルを調整し測定しました。その他のテープについては 当時開発されたローノイズ・ハイアウトプット型と呼ばれた音楽専用テープです。放送局仕様のテープは Maxell PM50,BASF PER528,agfa PER555 です。agfa PER555 は TEAC YTT-5001A テストテープに使用されており 録音はしていません。テストテープの歪率です。
各種生テープの調査
Scotch 111 THD(歪率) 1.0% 50μ 1970年前後製造
SONY SLH THD(歪率) 0.6% 35μ LH 1970年前後 SONY SLH-370 (銀箱)
SONY SLH-72-BL THD(歪率) 0.5% 35μ LH 1975年前後 SONY SLH-72-370BL (銀箱)
Scotch 207 THD(歪率) 0.4% 35μ LH 1975年前後 Scotch 207 (プラスチックケース)
Scotch 218 THD(歪率) 0.42% 35μ LH 1975年前後 Scotch 218-R60LHRC (金色紙箱)
Scotch 212 THD(歪率) 0.75% 35μ L 1975年前後 Scotch 212 (プラスチックケース)
Maxell UD35 THD(歪率) 0.4% 35μ 1975年前後 UD35-60B
Maxell PM50 THD(歪率) 0.25% 50μ 不明 放送局払下げ品
BASF PER528 THD(歪率) 0.25% 50μ 不明 放送局払下げ品
agfa PER555 THD(歪率) 1.1% 50μ 不明 TEAC YTT-5001A TEST TAPE
QUANTEGY 456 THD(歪率) 0.24% 50μ 2002年(製造ロット番号より推察) 未開封品
テープ厚みμ(ミクロン) テープ種 L はローノイズ LH はローノイズ・ハイアウトプットを表しテープに記載してありました。50μ厚さを 100番タイプ 35μ厚さを 150番タイプと呼んでいます。
上記検体は同じ再生レベルとした時の歪率です。この数字から判明することは録音時 0VU を基準として録音してた場合歪率を比較すればオーバーレベル録音のマージンが判ります。この中で QUANTEGY 456 は入力感度が高く-2dB の入力レベルで 0dBm/0.775V になります。反対に感度が悪いテープはSONY SLH・Scotch 212 で入力レベルを+2dB程大きくしなければ 0VU とはなりません。Scotch 111 は感度が悪く報告外とします。
TEAC X-10R の取扱説明書には歪率は0.8%(基準レベル)と表示されており 音楽専用テープであれば規格は満足しています。基準信号はほとんどの場合1000Hzですが400Hzと比較しましたが歪率に大きな差がありません。ほぼ同じ歪率と思います。当時は今日のような測定機器も多数所有しておらず 耳だけでテープの良し悪しを判別し購入していました。
これらの数値により生テープ磁性体の磁気飽和点を探しているわけです。同じ録音電流でありながらテープ種により磁気テープに残留する磁力が異なっていることが判明します。これがピーク信号などが録音された場合ソフトディストーションとなり飽和した急激なパルス波形とはなりません。これがアナログの耳障りとなりにくい理由です。デジタル録音であれば飽和領域を過ぎればすぐに歪が増加します。
上記生テープの特性調査結果から TEAC YTT-5001A 400Hz 0dB LRVEL SET 200nWB/m の互換品である副標準テープを作成しました。
採用した生テープは 最良のスペックが得られる QUANTEGY 456 を選択しました。所有しているテストテープはレベル調査しますと各テストテープの 400Hz 0dB信号は各テープで違う数値を観測しました。最近入手したMRLテストテープと校正してある 1000Hz 250nWB/m の副標準テープ信号レベルから -2dB を 今回の基準レベルとして作成しました。所有しているテストテープは製造後結構年数が経過していますので 設定した基準レベルから -1.0dB~-3dB程レベル低下が発生しています。上部画像の QUANTEGY 456 5号リールのテープにフルトラックで 基準周波数 400Hz ±0.5Hz以内 の信号で作成となりました。記録された信号レベルの変動は ±0.2dB 以内 となっており副標準テープとしては優秀な特性のテストテープが完成しました。規準となる正規校正証明のあるテストテープと校正すればこの作成したテープも標準テープ(テストテープ)と呼ぶことができます。基準値の証である校正証明書がありませんので副標準テープと呼びます。
TEAC YTT-5001 初期のテストテープにはレベルが 185nWB/m と表示されたテープもあり レベル差は 1.0dB ありますので使用する際にレベル差を換算すればテストテープとして使用することができます。SONY 400Hz 0dB 信号が記録してあるテストテープは SONY alignment tapes, J-19-F2 です。400Hz 基準信号は 185nWb/m です。このテストテープも入手困難です。
市場では数の少ない SONY TC-707FC FULL TRACK MONO 仕様の録音機が正常に動き出したからこそできる技です。
上記資料は参考程度とご理解ください。
このデッキが入手できましたので 道楽作業の一環として 周波数特性調整用の副標準テープ作成ですが このテープを作成するには各周波数を変更して再生されるレベルを正確に合わさなければなりません。時間のかかる手作業ですので のんびりと進行させていただきます。単一周波数であれば作成は比較的簡単です。
結局同じような機種が増殖する結果となりました。その後リール台と60Hz用モータープーリー部品調達として またもや TC 707MC に手を出してしまいました。相当使い込まれた完全ジャンク品です。操作ボタン用特殊豆電球切れも発生しています。定格 28V,0.04A DC24V で動作していました。仕方なく近代の高輝度白色LEDに変更お遊びです。その機器も修復作業で実用レベルとはなりましたが最終的には解体となります。工作を含め多くの時間を費やしましたが実用レベルまで修復ができました。TC-707FC は故障・不具合箇所も多く機種違いにより再生される基準電圧が異なっていました。もう少し回路を見直して修復・調整をする予定です。
この機種が実働しましたので 時間をかけてデッキ調整用副標準テープが作成可能となりました。
今後テープデッキ修復・調整作業において 高額な入手難のテストテープ(標準テープ)を使用しなくても副標準テープでほぼ初期性能の修復が可能となります。作製した副標準テープは新規に作成しているため 数年はレベル変動は発生しないと思います。
まとめ
上記画像は修復完了したSONY TC-707FC と SONY TC-707MC です。どちらの機器が該当するか判別できますでしょうか。外観上は判別できません。製品ラベルを確認するかヘッドの構造を見なければ判別はできません。PB VOL のつまみがないのが TC-707FC FULL TRACK HEAD 搭載品です。今回長時間の録音再生テストをしたテープは製造後極端に古くない QUANTEGY 456 です。AMPEX 456 から引き継いだ名称であり テープの特性変化は見受けられません。特長であるテープの色は赤茶けています。
右側のデッキ上部に水色のゴミがついていますが これは自作したホールドダウンテープでテープ保管時テープがほどけないようにする仮の接着テープです。
エージングに使用しているテープは TC-707FC で作成したテープです。フルトラック録音であるためマスター巻きとなるように左側のリールは空リールです。右側に使用するテープを装着し空リールに巻き戻しをしてから運用します。
この TC-707FC で録音したテープを他の機種で再生した場合 ステレオ機であれば 視覚上VUメーターが左右同じような振れ方が確認できます。修復完了した TEAC X-10R でも実験しました。アンバランス状態の場合は再生アンプ特性が狂っているのが判明します。テープスピードが19cm/sec のデッキの場合トラック違いがあっても再生される音はモノラルですが同じレベルにならなければどこか狂っていると判断できます。2Tr-38機であっても19cm/sec モードがあれば同様です。1/4 inch TAPE 4Tr-4Ch 機でも同様です。調整用テストテープがフルトラックで記録されているのが理解できると思います。
TC-9400A 4Tr,2Ch ステレオデッキの入手
この機種はリール台の修復用途として入手しましたが 部品の規格が異なり部品取り機とはなりませんでした。各ヘッドの調整箇所がいじられています。ねじロックペイントがはがれていました。最悪です。メカニズム構造は TC 707シリーズを継承していました。
同じメカニズム構造であるためTC-707FC のリール台破損箇所部品取りとして入手しましたが この機種は相当コストダウンされた設計です。リール台はプラスチック製で補修部品として使うことができません。今回ジャンク品として入手しましたが各ヘッド調整ねじが全数いじられておりまともに動作しないものからの蘇生です。
操作はソフトタッチのキー操作ではなく通常のテープレコーダーのようなメカニカルレバーで動作する構造です。そのためシステムコントロール基板も簡素化されていました。
この機種は4Tr,2Ch のヘッドが搭載されています。今回入手時 録音ヘッド・再生ヘッドが無茶苦茶にいじられた状態で入手しました。まずはメカニズムが正常に動作するかの点検からです。ブレーキ機構はやはり同じメカニズム構造であるため大きさの異なるリール径テープではアンバランスなブレーキの利き具合です。
ブレーキシューがフエルトから天然皮革に交換し安定した動作となっています。
このメカニズムではブレーキ構造に問題がありそうです。
バンドブレーキ構造ではブレーキ調整の必要な機器は数は多くありません。
自転車のブレーキ構造を思い出してください。ほとんどの自転車では後輪はバンドブレーキが採用されています。上り坂でブレーキをかけた場合自転車は後戻りします。進行方向はブレーキが利きますが逆方向はブレーキの利き具合が悪いと思われませんか。これが外巻きバンドブレーキの特徴です。この特性を利用して回転しているリールにブレーキをかけています。
TC-9400A で採用されているブレーキでも リールの回転する方向によりブレーキの利き具合は異なっています。この作用によりテープがたるまずに停止できるための左・右ブレーキバランス特性です。
録音・再生ヘッドはパーマロイヘッドではなく ヘッド摩耗がしにくいフェライトヘッドが搭載されています。色合いは通常の金属色銀色ではなく黒っぽいヘッドが搭載されています。ヘッド表面を観察しましたがパーマロイヘッドのような段付き摩耗状態は確認できませんでした。段付き摩耗が発生している場合はテープ走行調整は非常に厄介なのですが 目視ではほとんどわかりません。
ど素人がヘッドをいじくりまわしたようで現状復旧は大変な作業となりますので テストテープ・測定機器類が無い場合は修復困難となります。
各ヘッド調整は誰でもできる作業内容ではありません。ご承知おきください。
今回フェライトヘッドであったため目視ではヘッド摩耗によるテープ接触面段付き摩耗が発生していませんでした。新規ヘッド交換作業と変わらない作業内容です。
ヘッド調整ねじも傷んでいましたので新品のねじ類に交換します。
これらのヘッド調整が完了しなければ各信号レベル調整もすることができません。性能のよし悪しが発生する調整です。
画像のようにこの機種ではヘッドブロックは簡単に分解できます。
通常ヘッド調整ねじは素人では触れてはいけない個所ですので注意することが必要です。いじられておれば ねじロックペイントがはがれており調整ねじを動かした証拠です。ヘッド調整ねじロック状態を確認するのも修復には必要な事柄です。素人・にわかエンジニアもどき などにより闇雲に各調整箇所をいじられた機器であれば修復に多くの時間が必要となります。メーカーサービスでは修理不可として扱われる場合もあります。
ヘッド調整に使用する準備物
・テストテープ 16KHz or 12.5KHz アジマス調整信号
・プランクテープ 録音用テストテープ リファレンステープなど
・半透明のリーダーテープ
・測定機類
オシロスコープ
オーディオジェネレーター
ミリバル
・工具類
消磁してあるプラス、マイナスドライバー
・ねじロックペイント
などの準備が必要です。
1/4 inch TAPE トラック規格
ヘッド調整時に調整するヘッドのトラックにより録音される幅が異なります。今回修復した各デッキではヘッド構造が異なっています。TC-707FC では FULL TRACK ですので右側が該当します。1/4 inch テープ幅全体を使っているのが判明します。トラック数が異なる場合記録される磁性体幅が同じではありません。フルトラック記録であれば2トラック・4トラックとも同じヘッド幅で再生されるのが判明します。
テストテープはフルトラックで各信号が記録されているためトラック数が異なっていても使用できるのが理解できると思います。
磁気信号が記録されている場所は斜線で記入してありますが 何も記入していない場所がガードバンドと呼ばれており信号が記録されていません。これがあるためチャンネル間クロストークが発生しない理由です。
時々簡易調整テープを市場で見かけますが ほとんどの場合録音機が 2トラック・2チャンネル仕様がほとんどであり チャンネル数が異なる場合各ヘッドに現れる信号が変化することが言えます。
TC-707MC はハーフトラックですので真ん中の 2TRACK が該当します。ステレオの2チャンネルでないため①だけが記録されます。生録などで良く使用された 2トラ・38機はこれに該当します。①が左チャンネル・②が右チャンネルとなります。各チャンネルのヘッド幅は 2.0mm しかありません。
TC-9400A は4トラック・2チャンネル仕様機です。上図では4トラックの規格はNAB規格であり国内で民生用として販売されたデッキはこれに該当します。FWD記録の場合 ①は左チャンネル・③右チャンネルとなり REV方向では ③右チャンネル・④左チャンネルとなります。各チャンネルのヘッド幅は 1.1mm しかありません。
AKAI GX-280D-SS は4チャンネル・ステレオであり ①チャンネルは フロント左 ③チャンネルは フロント右 ③チャンネルは リアー右 ④チャンネルは リアー左 と各チャンネルが割り当てられています。
このように1/4インチテープの場合はトラック数により記録されている磁性体の構造が理解できたと思います。ゆえにデッキ調整用のテストテープはフルトラック記録でないと正規の調整は困難であるといえます。
昔の時代 カラオケ・カーステレオなどによく使用されたリアージェットテープは同じ1/4インチテープですが チャンネル数は8チャンネルです。いかに各チャンネルのトラック幅が狭いかが理解できると思います。テープ幅が6.3mm ですので各ヘッド幅は.0.5mm程度と推察できます。
各ヘッド調整項目
・ チルト調整(TILT チルト・仰角)
ヘッド面が走行するテープと平行になっているかを調整します。この調整が狂っている場合ヘッドの摩耗状態が均等とはならずヘッドが変摩耗することになります。又角度がずれている場合テープ走行がずれることもあります。
・ アジマス調整(AZMUTH アジマス・ヘッド角度調整)
テストテープに記録された磁気信号が損失がなく電気信号に変換されるかになります。この調整がずれている場合は他の機種で録音された信号が高域が出ない症状です。ヘッド汚れに似た症状です。この調整はヘッド角度調整信号 16KHz,12.5KHz の高域信号で調整します。又チャンネル間の位相ずれも調整しなければなりません。オシロスコープのベクトルモードでリサージュ波形観測により調整します。又2現象オシロであればADDモードを使えば片チャンネルの位相を逆転すれば調整可能です。
・ ヘッド高さ調整(HIGHT ハイト・ヘッドトラック位置調整)
チャンネルトラックの位置調整です。通常のテープ走行時であれば各チャンネルのヘッド位置が目視できません。そのため半透明のリーダーテープを走行させて目視でヘッド位置を調整します。Ch-1 ヘッド(左チャンネル)がテープの端に来るように調整します。調整値は 0から0.1mmまでとします。この調整が狂っている場合音小又は音漏れ 違うチャンネルの音が漏れるクロストークが発生します。
・ ヘッド面接触状態調整(TANGENCY タンジェンシー ヘッドギャップと走行するテープの位置合わせ)
通常の故障修理ではこの調整は必要ありません。今回ヘッド調整ねじ全数いじられていましたので新規ヘッド調整時に発生する調整項目です。走行するテープの接触面とヘッドギャップの位置を合わせる調整です。この調整が狂っている場合 再生音が出ません。又録音ヘッドがずれている場合録音した音が再生されません。特にバックテンションで走行するテープとヘッド面が接触によりテープレコーダーとしての信号のやり取りができるため微妙な位置調整作業が発生します。再生ヘッドはアジマス調整信号がオシロ・ミリバルで観測した信号レベルが最大値に調整します。
録音ヘッドの場合ヘッドアジマス調整信号を録音し再生された信号を オシロスコープ波形、ミリバルの電圧が最大になるように調整します。
VTRのエンベロープ調整のように 厄介な特性が微妙に変化するためクリチカルな調整作業です。
SONY のサービスマニュアルでは TANGENCY調整を ANGLE調整と呼ばれています。
上記が各ヘッド調整内容です。とりあえず各ヘッドは目視による荒調整をしなければなりません。半透明のリーダーテープでもって目視で各項目を調整します。その後再生ヘッド調整を実施し その後録音モードに移行し アジマス調整信号を録音しながら 再生された信号により録音ヘッド角度調整をします。各調整ねじはバランスよく調整しなければなりません。これが完了できれば 通常のレベル調整項目へ駒を進めることができます。
この機種の電気的調整箇所は多くありません。
取扱説明書のスペック欄にはライン出力調整つまみの解説で つまみ位置が最大(MAX)の時のレベルとして 規定出力の 0dB (0.775V) の表記です。この記載内容からまずはアンプの基準レベルを設定しなければなりません。
MONITOR スイッチは SOURCE ,LINOUT VR は最大値(MAX)とします。
LINE入力端子に 400Hz -20dBm の信号を入力し LINEOUT 端子にミリバルを接続し測定値が 0dBm(0.775V) となるように入力VRを調整します。その時負荷抵抗として100KΩの負荷を取り付けます。
この信号レベルがVUメーター 0VU の指示位置ですので再生アンプ基板 VUメーター感度調整を実施しメーター指示か 0VU となるように調整します。
その後再生アンプ基板の調整です。
TAPE SELECT は NORMAL で調整しています。この機種の製造当時のテープ種でありその後生テープも改良されていますのでSLHポジションでの調整は今回実施していません。
再生アンプ基板
・GAIN 再生レベル調整(P・B レベル調整)
テストテープ400Hz 0dB 信号で調整
・VUメーター感度調整 (METER ADJ)
テストテープ400Hz 0dB 再生信号で指示位置が0VUに調整
・19cm/s EQ(P・B EQ調整)
19cm/c の再生イコライザー調整
以下の調整は再生ヘッド角度調整済みでの調整です。
まずは400Hz 0dB の信号が記録されているテストテープを使用し再生します。MONITOR スイッチは TAPE です。ミリバルの指示値は 0dBm となるように各チャンネル GAIN と記載されたVRを調整します。VUメーターはすでに校正してありますので 0VU となっていると思います。
次に19cm/s EQの調整です。周波数特性調整テストテープを再生し通常は-10dB ですが各再生される信号レベルを測定し±1.0dB となるように19cm/s EQのVRを調整します。高域周波数で顕著な動きとなりますので 12.5KHz,又は16KHz の信号レベルが+1.0dB以内となるように調整します。
録音アンプ基板
・REC GAIN 録音感度調整
400Hz の信号がVUmeterの位置が0VU の信号を録音した場合再生ではVUmeterの指示位置が 0VU となるように調整
・BIAS ADJ バイアス調整
トリマーコンデンサーによるバイアス調整で オーバーバイアスレベルの設定
・TRAP
バイアストラップ調整 コイルのインダクタンスを調整する。録音アンプにバイアス信号が逆流しないようにするトラップ調整
・DUMMY コイル調整
この機種では片チャンネルごとの録音が可能であるため片チャンネル録音時にはバイアス電圧が変化しないように疑似負荷コイルを挿入してバイアス電圧を同一にするためのコイル。各チャンネルごとに調整が必要です。
まずはバイアス調整から始めます。通常の故障修理であればほとんど調整する必要はありません。リファレンステープを使い 1000Hz 0dB の信号を録音します。この作業はオーバーバイアス調整です。この信号を録音しながらバイアス調整用トリマーコンデンサーを容量値が少ないバイアスが浅い状態からバイアス電圧を増加していくと再生された信号のレベルが増加していきます。ピーク値を過ぎてピーク値より-0.5dB の指示位置がバイアス最良点です。各チャンネル同じ調整をします。
400Hzの信号にします。ミリバルの数値が0dBm(0.775V)に入力調整します。VUメーターは 0VU となっていると思います。この信号を録音し再生される信号がミリバルの数値が0dBm(0.775V)となるように各チャンネルGAIN と記載された 録音アンプ調整用VRを調整します。
これらの作業により録音した信号がテープに記録され再生されれば同じレベルとなるようにする調整です。この調整は使用するリファレンステープの特性により変化しますので今回は Maxell PM50 をリファレンステープとして調整しています。現在 SONY SLH のテープは製造終了後多年月経過していますのでリファレンステープとして使用するには問題があると判断しています。
この機種ではLINEOUTPUT VRfは再生VUmeter回路とは連動していません。このVRを可変しても再生VUメーター指示は変化しません。非連動です。
バイアス発振周波数が他社・他機種と比較すると高く 約 170KHz で発振しており 最初は故障と判断してしまいました。発振回路の各電子部品をチェックしましたが異常はありません。TEAC X-10R では100KHz, AKAI GX280D-SS では 110KHz でした。それらに比較しますと約1.5倍ほど周波数が高く故障と判断した理由です。しかしSONY 他機種のマニュアルを見ますと 150~170KHz と記載されている機種もあり正常と判断しました。マニュアルが入手できていないため寄り道作業となりました。フェライトヘッドはやはりパーマロイヘッドに比較すると基準レベルでの歪率は悪いように感じました。これがフェライトヘッドは音がかたいといわれる理由かもしれません。
今回の調整では正規サービスマニュアルを入手できていません。あくまでも個人的判断で調整していますので参考程度と解釈ください。
修復完了後の TC-9400A 測定値
テープスピード偏差 +0.4% 19.05cm/sec
ワウ・フラッター 0.02%
0VU録音時の歪率 0.8% (リファレンステープ Maxell PM50 )
+3VU 録音時の歪率 1.0%
再生周波数特性 +1.0dB 以内
このブログは自己責任における解釈の忘備録として作成しています。メーカーからのサービスマニュアルではありません。修復過程などを時系列順に記述しています。同じような作業をされる方の参考となればと思い作成しました。参考程度の資料と解釈ください。
骨董品機器いやガラクタ機器のくだらない説明をしました。文章を最後まで読まれた方は相当のマニア・物好きです。過去の遺物を現在でも実働させるには資料・部品などはメーカーから取り寄せることができません。過去に得た知識及び経験などの くだらない記述内容であったと思います。いずれ世間からは産業廃棄物・粗大ごみとして消えゆく商品をなるべく初期性能近くまで修復するための内容記述でした。無銭庵 仙人は凡人です。暇つぶしを兼ねて多種多様の骨董品オーディオ機器の修復作業しています。近年の人種 スマホ・タブレットなどばかり扱っている人物には縁遠い事柄です。高度成長時代に製造された機器が動き出すと快感が得られます。多少小遣いが目減りしますがパチンコ・競馬などギャンブルで失うよりは損失は少ないと額と思います。
この修復作業は営利を目的としておりません。あくまでも道楽・趣味の一環とご理解ください。多少とも同じような骨董品オーディオ機器に興味のある方には参考となると信じております。時には設計領域まで入ってしまうことがあります。このような機器ではやはり基準値があります。ただ不良個所だけを修復するのでは初期性能が得られない場合もあります。記述内容には理解できない事柄も含まれていたかもしれません。あくまでもアマチュア的精神が根底にあります。入手困難な部品などの加工・工作を伴いながら修復作業を楽しんでいます。
このブログにコメントをいただければ 極力回答できるように心がけています。過去の遺物であっても 捨てられる物であっても 生き返れば満足感が得られます。それは近年のデジタルハード機器・ソフトが主流ですが デジタルくさくない捨てがたいアナログオーディオの世界です。
このようにメーカー出荷時における当時の品質管理に必要な測定機器・測定調整方法など記述した文献は探しましたが数多く見受けられません。誤解釈説明なども多々あると思いますが 道楽作業凡人のたわごととご理解ください。
無銭庵 仙人の独り言
現在でも真空管式ステレオシステムには愛着があります。その中でも真空管アンプ作成には使用されている主要部品の価格高騰です。多くの製造会社の廃業も多く簡単に入手できません。電源トランス・出力トランスが高額となり 中々手が出せないのが現状です。真空管オーディオ雑誌に至っては特殊な回路構成ばかりで目新しいものはありません。過去のコピー品を模造した物ばかりで製作意欲はありません。元々真空管は過去のデバイスであり目新しいことはありません。
骨董品機器を保守するのが一番の近道と思います。高度成長期に製造・販売された機器が市場ではジャンク品として流通しています。これらを修復することが道楽作業となるわけです。ただ補修部品が入手できないというリスクも発生します。当時としては高額な商品であっても今や二束三文の価格で入手できる場合もあります。
このような修復過程を個人的見解によりブログに掲載しています。ただこの道楽・趣味は一般的ではありません。多くの愛好家が存在するとは思えません。職人的な感覚がなければ修復作業を楽しむこともできません。
道楽作業部屋は現在足の踏み場がありません。収集した骨董品オーディオ機器・骨董品測定機器に埋もれています。道楽部屋だけでは保管しきれず 一部は隠れ山小屋・別室に保管しています。
上記記載画像は道楽部屋の骨董品測定機器類です。道楽を続ける中で手足となる測定機類がすぐに使える状態でないと思うように修復副作業ははかどりません。この測定機類も時々校正をしないと正確な調整とはなりません。測定機器の構造も熟知しなければ自己校正作業もできません。時間がある道楽作業であるからできる事柄です。事業所のような ISO9001 シリーズでは測定機器などは定期的に校正しなければなりません。又校正証明書も保管・管理しなければ認証を得ることができません。道楽作業では各測定機器などは校正作業は義務付けられていませんが やはり基準値は誤差の無いように自己校正を実施しています。一種のこだわりです。
おかげさまで物を捨てられない症候群です。この部品は使うことはないと判断し廃棄後 後悔したことも多々あります。これらの理由により あらゆる部品などジャンク品を含め種類ごとに管理保管しています。骨董品修復時新規に購入する部品の数は多くありません。自給自足の修復作業です。メーカー修理であれば純正部品でしか修復できませんが 骨董品機器となると部品の入手は非常に困難な事柄です。時には部品加工もしなければ機能を維持できない場合も多々発生します。
このような環境の中 骨董品オーディオ機器の修復作業をしています。
google+ には上記測定器群の機器説明を掲載しています。コレクション欄の 道楽作業に使用する骨董品測定機器類 に自己校正作業内容なども含め掲載しています。興味のある方はご覧ください。
google+ のサービスは終了しました。あしからず。
東京通信工業製 新古品 PW-5P の生テープを入手
このテープを見た時の印象は 表示が Soni-Tape と記載されており SONY TAPE ではありません。当時でも今はやりのパッチモン 偽ブランド と判断しました。製造者は東京通信工業株式会社となっており 現在のSONY であると判明します。SONY 創業時の会社名です。よく見ると箱の右上に赤色に白抜けで Sony と読めます。世界的に有名な会社に成長しましたが 終戦後国内で最初にテープレコーダーが開発された会社と記憶しています。世間ではST管5球スーパーラジオが全盛の時代です。まだまだテープレコーダーなどは高額な商品であり 学校などで見かけるのが SONY が大半でした。真空管式で動作しており 録音時消去ヘッドの配線をふれたとき感電した記憶があります。マイクロホンも標準プラグが採用されています。今回テープ収納箱内部には 価格表・お客様アンケートはがきが同梱されています。印刷年度が記載されており 昭和29年と判明しました。今から約60年前の生テープを入手することができました。さっそく今回生き返った TC-707FC で録音テストをしましたが QUANTEGY 456 と比較すると感度差が 十数dB 発生していますが正常に録音できました。テープ・ヒスノイズが多かった理由と思います。商品カタログには紙ベース録音テープの記載もあります。当時大卒銀行員の初任給は5600円程度です。田舎の庶民ではもう少し少額の給料でした。PW-5P テープ価格は880円と記載されています。10本買うことができません。現代の大卒初任給を20万円と仮定するとテープ一本当たり3万円強です。如何に生テープも高額であったかが判明します。子供のおこずかいが一日当たり10円以下と記憶しています。
付録・おまけ SONY TC-6635 の概要
現在山小屋で保管中の 骨董品デッキ SONY TC-6635 4Tr:2Ch です。初期に導入した1モーター・3ヘッド仕様のデッキです。
現在も稼働しますが多少手を加えなければ100%の機能は出ません。以前モーターコイルの断線によりジャンク品の同じ型式を入手して修復は一応しています。
駆動するメカニズムの劣化が発生していました。鉄製のシャフトとピンチローラー駆動アームアルミダイキャスト製においてシャフトとの接触面で硬くなり動きません。アルミダイキャストの劣化により膨張したようです。ジャンク品も同様の症状になっていました。構造としてはモノラルテープレコーダーからの派生と思います。同じ個所の不良が発生していました。この機種で録音した多数本の録音されているテープのデジタル変換作業は TEAC-X10R を使って終了です。
前面パネルを分解したところです。左右巻取りリールの動力駆動用にアイドラーが2個見つけることができます。フライホイル駆動用と巻取りリール駆動用です。
モータープーリーには60Hz用と明記されていました。3段の段差があるモータープーリーです。巻き戻し時はモータープーリーからオレンジ色の丸ベルトで左上のプーリーに常時回転しています。巻き戻しベルトが切れたためバンコード丸ベルトを現在は使用しています。直径3mmでは細すぎるため5mmが必要なのですが手持ち品にないため仮の巻き戻しベルトです。
3ヘッドの取り付け状況です。このデッキではテープをかけるのに通常であればピンチローラーは垂直に動かないのですが停止中はピンチローラーがヘッド面より下がっています。
ヘッドカバー内部に50Hz用キャプスタンスリーブは画像の左上に収納されています
テープ走行時の状態です。ヘッド面をテープを圧接するテープパッドがヘッド面に平行状態です。ピンチローラーは垂直に移動しキャプスタン軸に圧接しています。
裏面からの画像です。モーターが1個しかありません。アンプ基板も基板・スイッチ等の間は手配線でありコネクターなどは使用されておらず 直接半田付けされています。
特に骨董品1モーター仕様のデッキではゴム関係の劣化等が発生しており部品の入手が困難です。初期性能を発揮するには難しい面もあります。
現在はTEAC X-10R が自己修復作業により稼働していますので 動態保存程度のお遊びデッキです。
以前部品取り用としてジャンク品で入手したデッキはヘッド摩耗程度が少なく 今回修復した TC-707MC にヘッドを載せ替えて遊ぶのも面白いかもしれません。
その場合は録音・再生アンプ基板も新たに設計しなければなりません。特性のよいオペアンプIC JRC NJM4558DD など多数ありますので うまく設計すれば難しい事柄ではありません。
TC-707MC,FC は丈夫なメカニズムであり 現在でもメカニズムは立派な特性です。
今後のお遊び課題といたします。
テープセンサー基板拡大写真の要望によりトリミング画像を掲載します。
回路図も入手できていませんので時間のかかる手作業での修復内容です。
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手書きで起こしたメインアンプ部回路図 |
パワーアンプ基板は本体に装着した場合 下駄基板がないため詳細の各部電圧・電流測定および修復作業はできません。そこで基板を取り外し疑似回路を机上で作成しました。電力増幅トランジスターはシャーシーに固定してあるため疑似回路として 2SD330 ×2個をアルミ放熱板に取り付け空中配線としました。定電圧電源DC:24V を用意します。
電力増幅トランジスター Q7.Q8 各2SD257(2SD291) NPNトランジスターは 電源電圧に直列接続であり プッシュプル回路では中点電圧(スピーカー接続点)は電源電圧の半分 12V ほどでないと正常動作とはなりません。改修前は中点電圧は 14~15V 程度です。各電力増幅トランジスターのエミッターには 1Ω/3W の抵抗がありこの抵抗に発生する電圧測定により無信号時のアイドリング電流を観測します。今回の故障では音量が小さいときに歪が多く感じられます。出力段でのバイアス不適当による歪です。下段 Q8 2SD257 無信号時アイドリング電流が流れていません。上段 Q7 は数mA観測できました。下段はB級よりのC級増幅回路となっています。通常出力段はAB級動作です。
原因は下段トランジスターのドライブ回路の不良です。Q6 2SC1363 ベースバイアス電源電圧が不足状態です。ダイオード(D1,D2,D3)3直列回路で発生する電圧が低いためドライブトランジスター Q6 の動作点が狂っていました。シリコンダイオードの順方向電圧は約0.6~0.7V程度です。当時数ボルトのツェナーダイオは見かけませんでした。そこでダイオードを3直列接続とし1.8Vほどの定電圧電源回路としたわけです。ベースバイアス抵抗は R32 5.1K,R33 6.8K 直列接続です。抵抗中点・ベース電圧はダイオードで発生する電圧 1.73V からの分圧電圧 0.99V です。R37 330Ωエミッター抵抗に発生した電圧 0.33V では次段終段トランジスターのベース電圧としてはカットオフ状態でアイドリング電流は流れません。
問題回避策として3直列のダイオードに新しく一個追加し4直列にしました。ベースバイアス用電源電圧は 2.35V になりました。この状態ではアイドリング電流が 100mA 近くとなり電流過大です。そこで R32 5.1K を 6.04K に変更すればアイドリング電流は 30mA ほどになります。
出力トランジスター 2SD257 のバランス調整は初段トランジスター Q3 2SC1363 バイアス抵抗 R21 220K の抵抗値変更で改善されます。220K を 240K に変更で無信号時の各出力トランジスターQ7,Q8 の電圧配分は電源電圧 24V の半分12V程度(12.42V)に分圧となりました。ただ多くのメインアンプに回路として存在するアイドリング電流・温度変化補償回路は付加されていません。通電後30分ほど経過した場合アイドリング電流は通電後 20mA から 30mA 程度に落ち着くように回路抵抗値を変更・設定しています。
各エミッター抵抗1Ωに発生する電圧は数10mVの電圧です。アナログメーター式のテスターでは測定できない微小な電圧を測定しますので 感度の良い近年製デジタルテスターを使っての測定が最良と思います。アナログ回路計(テスター)であってもYEW3201型は0.3Vレンジが搭載されていますので測定は可能です。
これらの回路定数変更によりほぼ無歪状態と改善できました。修理というよりも改造かもしれません。
その後ダイオード4直列変更には違和感があり 手持ち各種のダイオードを調査しました。当時のパワーアンプのバイアス回路にはトランジスターをダイオードとしての回路を思い出し 2SC828 のコレクターをカットしベース・エミッター間をダイオードとして3直列では 2.215V を得ることができました。R32 5.1K に戻し中点電圧は1.212V 出力段バイアス電流を確認すると正常動作となっていました。無信号では電源投入時 R39 1Ωに発生する電圧は19mV,R38 22mV を観測。その後電流換算値 R39 28mA,R38 30mA程度に落ち着きます。
このモニターアンプ基板はステレオ機 TC 707S,TC 707SD には搭載されていません。モノラル機のみに搭載されていますので参考になるとは思えませんが 余興程度と解釈ください。TONE回路はCR減衰型を使っています。調整用VR TREBLE,BASS はやはり 50KΩ(A)型 が使用されています。
修復後のオーディオアンプ特性
8Ω抵抗負荷 THD 1% 2.88W THD 3% 3.57W THD 10% 4.65W
1W 出力時 THD 0.8% 0.1W 出力時 THD 0.38%
通常室内でのスピーカーからの音出しでの運用であれば 数100mWほどしか出力は出ていません。HI-FI アンプとは言えませんが実用レベルです。オーディオジェネレーター歪率 正弦波 400Hz,1KHz 0.015%
TC-707FC の入手
左画像のヘッド取り付けベースは簡単に分解することができます。又テープガイド金具も取り付いた状態です。ヘッドからの配線もコネクター仕様であり現場では半田付け作業も発生しません。ヘッドカバー取り付けシャフト横にある直径の大きなねじをマイナスドライバーで2個取り外せばヘッドブロック全体が簡単に交換できる構造です。簡単に調整できないヘッド調整は工場で走行調整済みとしてのヘッドブロックが供給することが可能な構造です。あとは現場でテストテープとリファレンステープを使って数か所の電気的調整をすれば元の特性に戻る仕組みです。これが時間との勝負であるプロ使用といわれる由縁です。
市場ではほとんど見つけ出せない SONY TC-707FC を入手しました。ヘッドブロックには FULE TRACK と明記されています。
入手した TC-707FC は外観・機器内部とも使用感があり TC-707MC に比較すると廃棄品に近い状態でした。値打ちの分らない者ではゴミと思うようなジャンク品を入手しました。
入手後各部の点検しましたが様々な不具合が判明しました。主要構造部品は使えそうです。一番最初に確認した個所は各ヘッドの状態です。目視でフルトラックであることを現認できましたので安堵しました。ヘッド摩耗状態も比較的良好で均等に摩耗しています。これであれば時間をかければ何とか修復可能であると判断しました。
関東地区からの購入でしたが うれしいことに60Hz仕様です。サイクル交換作業は必要ありません。TC-707MC に比較するとそれなりの品位ですが入手して初めて判明する個所も多々あります。簡単な写真だけでの判別でのジャンク品購入は一種のバクチです。
入手後の点検で判明した不良個所
・キャビネット下部の脚欠品
・ACコード欠品
・再生基板が外れている
・モニターアンプ再生音ハム音のみ
・ブレーキ動作不安定
・一部メカニズムの動きがスムーズでない
・各ユニット基板調整箇所がいじられている
・テープ再生時々止まる
・巻取りリールシャフト折れ・欠品
など他にも不良個所がありますが修復をしていく過程において不良個所は増えてくると思います。
左の画像は各ヘッド状況です。TC-707MC と比較すればヘッドの構造違いが判明します。内部の構造比較をしましたら ヘッドブロック・各ヘッド仕様違いのみであり その他の構造は同じ部品で組み立てられていました。
メーカーからは部品など入手できないことを含め 移植部品取り機とするか? もう一台同じような機種が増殖するか? 修復過程において判断するつもりです。
TC-707FC はフルトラック仕様です。生テープの扱いについてはマスター巻きで使用しなければなりません。使用した後のテープはがら巻きではなく きれいにピッチ巻きされた状態でテープ保管します。4Tr-2ch.2Tr-MONO であればテープはリールの両面使えますが 2Tr-2ch・4Tr-4ch と同様の片側のみですので 使用後ピッチ巻きとするには 最初テープを空リールに移したのち使用します。
TC-707FC の改造
製造後半世紀近くなるデッキです。不良個所も多数見かけられましたが一応実用レベルまで修復が完了しました。その中で一部使用しずらい面もあり改造をしています。
!! 録音レベル調整VRがほぼ最大値となっており録音レベル調整するに余裕がない。
・ VUメーター,モニターアンプに出力する個所のアッテネーター比率の見直し。
分圧抵抗が 6.2KΩ(R124)と5.1KΩ(R123)に分割された中点からモニタースイッチ・LINEアンプ部に出力されます。LINEアンプ出力部にVUメーター感度調整とLINE出力端子が接続されます。抵抗値を 6.8KΩ,4.7KΩ に変更しました。合成抵抗値はほとんど変化しません。0VU の指示位置で録音アンプの入力レベルを大きくすることができるために変更すると レベルは数dB稼ぐことができます。又録音レベル調整用VRに直列接続されている抵抗2.2KΩ(R126)の変更でも良いと思います。
このデッキではメーター感度調整は出力端子レベルで 0dBm 出力時 VUメーターの指示位置は 0VU となるように基準レベルを設定しますので このような小細工をしました。又この作業によりVUメーターは測定に使用しているミリバルと校正されている結果となります。
!! 今回テストテープ(副標準テープ)の作成を目的としているため PB VOL を触れた場合 再生基準レベルが変化してしまう。
・ PB VOL 調整つまみを除去するにあたり 密閉型通測用20KΩ(B)のVRに変更。
半固定仕様のマイナスドライバーで可変できるとする。又直列に接続してある抵抗値を12Kから22KΩに変更し微調整拡大とする。必要以外はこのVRに触れにくいようにしています。
この作業によりキャリブレーション位置である 再生レベルが固定されます。テストテープ 400Hz 0dB 信号が固定された位置で VU メーター指示位置 0VU 出力レベルは 0dBm(0.775V) になります。
この作業がキャリブレーション位置の固定です。
これらの作業により VUメーターで0VUの信号 を録音した場合 再生されれば VUメーターは0VU 0dBm の出力となります。この作業はリファレンステープを使って調整する 録音レベル・再生レベル調整です。バイアス調整により テープ種の違いなどによりレベルは変動します。今回リファレンステープを使用回数の少ない Maxell PM50-5LB として調整しています。この状態で QUANTEGY(旧AMPEX) 456 のテープを使用するとレベルは+2dB 程度高くなります。0dBmとするには入力レベルを-2dB として録音しなければなりません。
これらの作業により再生レベルが固定されることになります。VUメーターが 0VU を指示した時には出力端子レベルは 0dBm(0.775V) となります。出力レベルとしては標準的なデッキ出力レベルです。ただこのデッキでは測定時には出力端子に負荷抵抗100kΩを接続して測定しないとレベル変動が +0.5dB 程度変化しますので精密測定時には負荷抵抗を接続して調整してください。
このように各社のデッキにおいては再生レベルメーター表示と出力レベルが連動しており テープ種の違いによる感度差が目立たないように設計されています。プロ仕様と異なり簡単にEQ特性・バイアス調整ができない構造のためと思います。プロであれば使用するテープ種の違いにより 音響エンジニアがデッキを録音・再生がフラットな特性となるように微調整しています。VUメーターも簡易型ではなく正規のVUメーター測定器である交流電圧計を使用しています。又デッキ内に調整用基準信号発生器(オーディオジェネレーター)も搭載されており テープ種ごとのバイアス・EQ特性設定をマイコン制御でメモリーする機種も存在します。お遊びではプロ用コンソールタイプのデッキ機能までは必要はないと思います。
TC-707S の入手
TC-707FC 入手時 ターンテーブル(リール台)が破損していました。補修部品がメーカーからは入手できないため 同等機種のジャンク品・部品移植のため物色していました。今回入手したのは TC-707S 2Tr-2Ch 仕様のステレオデッキです。
画像からも判明すると思いますが メカニズムは同一構造です。ただジャンク品で50Hz地域から購入したため 内部は50Hz仕様です。画像右上のアルミ箔検出ストップセンサーはジャンパー基板のみで回路は省略されています。モータープリーの直径が大きいためキャプスタンモーターは右側にずらした状態でねじロックしてあります。
とりあえずキャプスタンモーターはコンデンサーを60Hz に変更して 各部点検を始めます。本当はリール台部品取り機として購入したのですが 各ヘッドの摩耗状態は少なく しばらく遊ぶことにします。ジャンク品であり一部欠品している個所もあります。
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TC-707FC FULL TRACK HEAD |
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FULL TRACK HEAD 構造 |
市場ではほとんど見つけ出せない SONY TC-707FC を入手しました。ヘッドブロックには FULE TRACK と明記されています。
入手した TC-707FC は外観・機器内部とも使用感があり TC-707MC に比較すると廃棄品に近い状態でした。値打ちの分らない者ではゴミと思うようなジャンク品を入手しました。
入手後各部の点検しましたが様々な不具合が判明しました。主要構造部品は使えそうです。一番最初に確認した個所は各ヘッドの状態です。目視でフルトラックであることを現認できましたので安堵しました。ヘッド摩耗状態も比較的良好で均等に摩耗しています。これであれば時間をかければ何とか修復可能であると判断しました。
関東地区からの購入でしたが うれしいことに60Hz仕様です。サイクル交換作業は必要ありません。TC-707MC に比較するとそれなりの品位ですが入手して初めて判明する個所も多々あります。簡単な写真だけでの判別でのジャンク品購入は一種のバクチです。
・キャビネット下部の脚欠品
・ACコード欠品
・再生基板が外れている
・モニターアンプ再生音ハム音のみ
・ブレーキ動作不安定
・一部メカニズムの動きがスムーズでない
・各ユニット基板調整箇所がいじられている
・テープ再生時々止まる
・巻取りリールシャフト折れ・欠品
など他にも不良個所がありますが修復をしていく過程において不良個所は増えてくると思います。
左の画像は各ヘッド状況です。TC-707MC と比較すればヘッドの構造違いが判明します。内部の構造比較をしましたら ヘッドブロック・各ヘッド仕様違いのみであり その他の構造は同じ部品で組み立てられていました。
メーカーからは部品など入手できないことを含め 移植部品取り機とするか? もう一台同じような機種が増殖するか? 修復過程において判断するつもりです。
TC-707FC はフルトラック仕様です。生テープの扱いについてはマスター巻きで使用しなければなりません。使用した後のテープはがら巻きではなく きれいにピッチ巻きされた状態でテープ保管します。4Tr-2ch.2Tr-MONO であればテープはリールの両面使えますが 2Tr-2ch・4Tr-4ch と同様の片側のみですので 使用後ピッチ巻きとするには 最初テープを空リールに移したのち使用します。
TC-707FC の改造
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一部操作面の改造 |
!! 録音レベル調整VRがほぼ最大値となっており録音レベル調整するに余裕がない。
・ VUメーター,モニターアンプに出力する個所のアッテネーター比率の見直し。
分圧抵抗が 6.2KΩ(R124)と5.1KΩ(R123)に分割された中点からモニタースイッチ・LINEアンプ部に出力されます。LINEアンプ出力部にVUメーター感度調整とLINE出力端子が接続されます。抵抗値を 6.8KΩ,4.7KΩ に変更しました。合成抵抗値はほとんど変化しません。0VU の指示位置で録音アンプの入力レベルを大きくすることができるために変更すると レベルは数dB稼ぐことができます。又録音レベル調整用VRに直列接続されている抵抗2.2KΩ(R126)の変更でも良いと思います。
このデッキではメーター感度調整は出力端子レベルで 0dBm 出力時 VUメーターの指示位置は 0VU となるように基準レベルを設定しますので このような小細工をしました。又この作業によりVUメーターは測定に使用しているミリバルと校正されている結果となります。
!! 今回テストテープ(副標準テープ)の作成を目的としているため PB VOL を触れた場合 再生基準レベルが変化してしまう。
・ PB VOL 調整つまみを除去するにあたり 密閉型通測用20KΩ(B)のVRに変更。
半固定仕様のマイナスドライバーで可変できるとする。又直列に接続してある抵抗値を12Kから22KΩに変更し微調整拡大とする。必要以外はこのVRに触れにくいようにしています。
この作業によりキャリブレーション位置である 再生レベルが固定されます。テストテープ 400Hz 0dB 信号が固定された位置で VU メーター指示位置 0VU 出力レベルは 0dBm(0.775V) になります。
この作業がキャリブレーション位置の固定です。
これらの作業により VUメーターで0VUの信号 を録音した場合 再生されれば VUメーターは0VU 0dBm の出力となります。この作業はリファレンステープを使って調整する 録音レベル・再生レベル調整です。バイアス調整により テープ種の違いなどによりレベルは変動します。今回リファレンステープを使用回数の少ない Maxell PM50-5LB として調整しています。この状態で QUANTEGY(旧AMPEX) 456 のテープを使用するとレベルは+2dB 程度高くなります。0dBmとするには入力レベルを-2dB として録音しなければなりません。
これらの作業により再生レベルが固定されることになります。VUメーターが 0VU を指示した時には出力端子レベルは 0dBm(0.775V) となります。出力レベルとしては標準的なデッキ出力レベルです。ただこのデッキでは測定時には出力端子に負荷抵抗100kΩを接続して測定しないとレベル変動が +0.5dB 程度変化しますので精密測定時には負荷抵抗を接続して調整してください。
このように各社のデッキにおいては再生レベルメーター表示と出力レベルが連動しており テープ種の違いによる感度差が目立たないように設計されています。プロ仕様と異なり簡単にEQ特性・バイアス調整ができない構造のためと思います。プロであれば使用するテープ種の違いにより 音響エンジニアがデッキを録音・再生がフラットな特性となるように微調整しています。VUメーターも簡易型ではなく正規のVUメーター測定器である交流電圧計を使用しています。又デッキ内に調整用基準信号発生器(オーディオジェネレーター)も搭載されており テープ種ごとのバイアス・EQ特性設定をマイコン制御でメモリーする機種も存在します。お遊びではプロ用コンソールタイプのデッキ機能までは必要はないと思います。
TC-707S の入手
TC-707FC 入手時 ターンテーブル(リール台)が破損していました。補修部品がメーカーからは入手できないため 同等機種のジャンク品・部品移植のため物色していました。今回入手したのは TC-707S 2Tr-2Ch 仕様のステレオデッキです。
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TC-707S 内部構造 |
画像からも判明すると思いますが メカニズムは同一構造です。ただジャンク品で50Hz地域から購入したため 内部は50Hz仕様です。画像右上のアルミ箔検出ストップセンサーはジャンパー基板のみで回路は省略されています。モータープリーの直径が大きいためキャプスタンモーターは右側にずらした状態でねじロックしてあります。
とりあえずキャプスタンモーターはコンデンサーを60Hz に変更して 各部点検を始めます。本当はリール台部品取り機として購入したのですが 各ヘッドの摩耗状態は少なく しばらく遊ぶことにします。ジャンク品であり一部欠品している個所もあります。
商用電源周波数切り替え作業について
通常サイクル交換といわれる作業です。
1.キャプスタンモータープーリーの交換 60Hz 29.7mm/φ 50Hz 36mm/φ
2.キャプスタンモーターの取り付け位置の調整(キャプスタンベルト張力調整)
3.キャプスタンモーター進相コンデンサー容量変更 60Hz 2μF 50Hz 2μF+0.5μF
進相コンデンサーはブロック型であり3端子構造です。白色ジャンパー線で変更します。
ジャンク品であり入手時各所に難点がありました。
・ ヘッドカバー欠品
・ ACコード欠品
・ P,B VOL つまみ欠品
・ ヘッドブロック周辺 編集のマーキングチョーク汚れ
・ セット全体に汚れ・傷
・ 50Hz仕様
・ 幸いに各ヘッド・レベル調整箇所はいじられていません
入手時の点検で判明した個所です。一応通電はしましたので電気回りも順次点検していきます。ただ゛テープ再生テストは50Hz 仕様であり音楽再生テストでは回転は正常時より早くなります。
この機種は業務用途として以前は使用されていたと思います。ヘッド周りに編集用黄色・白色のチョーク跡が付着しており まだ完全にはクリーンアップしていません。その割には各ヘッドを目視しましたが致命的なヘッド摩耗状態ではありません。初期特性が得られる修復可能な範囲です。
この機種は部品取り用途機として入手しましたが いつもと同様 同等機種・増殖となるかもしれません。一番のネックは60Hz用モータープーリーの入手です。またもや60Hz用モータープーリーの物色が始まるかもしれません。機器重量が20Kg超えますので輸送費用も馬鹿になりません。とりあえずは修復完了している TC-707MC からモータープリーを借用しての修復作業となります。
左の画像はブレーキ・キャプスタンモーター付近です。
モータープリーには50の刻印があります。モータープーリーの直径が60Hz 用より大きいためモータープーリーの左上から右下のM4ねじが小判型の穴では右寄りにセットされています。ここがサイクル交換で調整しなければならない個所です。
この機種も他の機種と同様にブレーキの不具合が発生していました。ブレーキシューはフエルトから皮革に交換しました。皮革の厚みが大きいためブレーキ調整作業が発生します。メカニズムの構造から試行錯誤後の結果画像中央上部にあるブレーキ解除ソレノイドアームに取り付けられているピアノ線T字型スプリングを曲げて調整しました。正規であれば確度は90度ですが角度が違っているのが判明すると思います。この状態で正常にブレーキは動作します。他の場所は触れておりません。同等機種4台目となると修復作業ははかどります。やはり設計が同じであり不具合となる個所もほぼ同じとなる傾向です。何とか TC707S,SD 用のサービスマニュアルは入手しましたが確認すると ブレーキ調整はクリチカルな調整が要求されます。交換したフエルトと皮革の厚みが同じであればほぼ調整しなくて済むのですが 代用品を使いますので当初は簡単な作業ではありません。
試行錯誤の結果ブレーキシューの厚みが異なる場合 T型のスプリング角度調整で正常動作することが判明しました。
モータープーリーを借用後 60Hz として動作状態となります。これからは各動作確認作業となります。TC-6635 でも存在した機能が搭載されています。その後のデッキではあまり見かけることのない機能です。
・ SOS サウンド オン サウンド 片チャンネル再生・もう片方のチャンネルが録音機能で元の音に新規音源をミキサー録音するモードです。現在のデジタル録音・ミキサーと違い必ずアナログの場合ダビングですので音質は低下します。
・ ECHO エコー装置であり ローランドにもこの機能のエコー・マシーン エンドレステープ内蔵の商品もありました。録音ヘッドと再生ヘッド間には時間のずれが発生します。エコーマシーンと異なりマルチヘッド構造ではありませんが この機能で再生された音源を録音側に戻すことによりエコーが発生します。一種の録音効果で遊ぶモードと思います。ただエコーの音質はアナログですので劣化します。戻す信号レベルが大きすぎると発振状態となります。
現在ではほとんど使うことのないモードと思います。
録音イコライザーには ノーマル・SLH モードがあります。当時SONY で開発されたスーパー・ローノイズ・ハイアウトプットの略称で 今となってはあまり意味のないモードと思います。その後生テープも改良されており ノーマルモードで Maxell PM50系のテープをリファレンステープとして調整しますので今回はSLHモードは無視します。SLH の後に開発されたテープはULHです。電波の波長ではHF, VHF.UHF,SHF と順番に波長は短くなりますが ULH ウルトラと呼ばれますが この名称はいかがなものでしょうか。日本のウルトラマンが強いか 米国のスーパーマンが強いのか定かではありません。販売当時商品名称に疑問がありました。後発のテープ・ウルトラが特性が悪いようにも解釈できます。
モータープリー 60Hz 用を TC-707MC から借用しました。以前 TC-707FC FULL TRACK で録音した音楽を再生しました。このような点検の時にはフルトラック記録であればチャンネル・トラック違いでもどの出力も同じレベルとなるの便利です。最終的なテストテープでのメカニズム特性は確認できていませんが モノラル出力ですが VUメーター再生状態は違和感はありません。400Hz 0dB LEVEL SET 信号はP,B VOL 10時位置でした。
録音レベルチェック
400Hz 0dB 信号の録音リファレンステープ Maxell PM 50 では-3dB程下がっていました。録音レベル調整で正常となっており 録音レベルにはまだ余裕がありました。
総合調整すればほぼ初期性能に調整は可能と思います。部品取り機でもあり一応の成果は得られました。実用レベルで現在動作しています。同じ機能で TC-707SD の機種は木製のキャビネットに収納されておらず 今回箱入りにこだわりました。
ヘッド・各調整箇所は製造後触れられていないのとヘッド摩耗程度が良好であったのが幸いと思います。
参考記載
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TC-707S ヘッドブロック 2TRACK STEREO |
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2Tr -2Ch 仕様の各ヘッド 右より ERASE HEAD,RECORD HEAD,PLAY HEAD |
・ ヘッドカバー欠品
・ ACコード欠品
・ P,B VOL つまみ欠品
・ ヘッドブロック周辺 編集のマーキングチョーク汚れ
・ セット全体に汚れ・傷
・ 50Hz仕様
・ 幸いに各ヘッド・レベル調整箇所はいじられていません
入手時の点検で判明した個所です。一応通電はしましたので電気回りも順次点検していきます。ただ゛テープ再生テストは50Hz 仕様であり音楽再生テストでは回転は正常時より早くなります。
この機種は業務用途として以前は使用されていたと思います。ヘッド周りに編集用黄色・白色のチョーク跡が付着しており まだ完全にはクリーンアップしていません。その割には各ヘッドを目視しましたが致命的なヘッド摩耗状態ではありません。初期特性が得られる修復可能な範囲です。
この機種は部品取り用途機として入手しましたが いつもと同様 同等機種・増殖となるかもしれません。一番のネックは60Hz用モータープーリーの入手です。またもや60Hz用モータープーリーの物色が始まるかもしれません。機器重量が20Kg超えますので輸送費用も馬鹿になりません。とりあえずは修復完了している TC-707MC からモータープリーを借用しての修復作業となります。
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ブレーキシューの交換 |
モータープリーには50の刻印があります。モータープーリーの直径が60Hz 用より大きいためモータープーリーの左上から右下のM4ねじが小判型の穴では右寄りにセットされています。ここがサイクル交換で調整しなければならない個所です。
この機種も他の機種と同様にブレーキの不具合が発生していました。ブレーキシューはフエルトから皮革に交換しました。皮革の厚みが大きいためブレーキ調整作業が発生します。メカニズムの構造から試行錯誤後の結果画像中央上部にあるブレーキ解除ソレノイドアームに取り付けられているピアノ線T字型スプリングを曲げて調整しました。正規であれば確度は90度ですが角度が違っているのが判明すると思います。この状態で正常にブレーキは動作します。他の場所は触れておりません。同等機種4台目となると修復作業ははかどります。やはり設計が同じであり不具合となる個所もほぼ同じとなる傾向です。何とか TC707S,SD 用のサービスマニュアルは入手しましたが確認すると ブレーキ調整はクリチカルな調整が要求されます。交換したフエルトと皮革の厚みが同じであればほぼ調整しなくて済むのですが 代用品を使いますので当初は簡単な作業ではありません。
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TC-707シリーズ 60Hz,50Hz モータープーリー |
モータープーリーを借用後 60Hz として動作状態となります。これからは各動作確認作業となります。TC-6635 でも存在した機能が搭載されています。その後のデッキではあまり見かけることのない機能です。
・ SOS サウンド オン サウンド 片チャンネル再生・もう片方のチャンネルが録音機能で元の音に新規音源をミキサー録音するモードです。現在のデジタル録音・ミキサーと違い必ずアナログの場合ダビングですので音質は低下します。
・ ECHO エコー装置であり ローランドにもこの機能のエコー・マシーン エンドレステープ内蔵の商品もありました。録音ヘッドと再生ヘッド間には時間のずれが発生します。エコーマシーンと異なりマルチヘッド構造ではありませんが この機能で再生された音源を録音側に戻すことによりエコーが発生します。一種の録音効果で遊ぶモードと思います。ただエコーの音質はアナログですので劣化します。戻す信号レベルが大きすぎると発振状態となります。
現在ではほとんど使うことのないモードと思います。
録音イコライザーには ノーマル・SLH モードがあります。当時SONY で開発されたスーパー・ローノイズ・ハイアウトプットの略称で 今となってはあまり意味のないモードと思います。その後生テープも改良されており ノーマルモードで Maxell PM50系のテープをリファレンステープとして調整しますので今回はSLHモードは無視します。SLH の後に開発されたテープはULHです。電波の波長ではHF, VHF.UHF,SHF と順番に波長は短くなりますが ULH ウルトラと呼ばれますが この名称はいかがなものでしょうか。日本のウルトラマンが強いか 米国のスーパーマンが強いのか定かではありません。販売当時商品名称に疑問がありました。後発のテープ・ウルトラが特性が悪いようにも解釈できます。
モータープリー 60Hz 用を TC-707MC から借用しました。以前 TC-707FC FULL TRACK で録音した音楽を再生しました。このような点検の時にはフルトラック記録であればチャンネル・トラック違いでもどの出力も同じレベルとなるの便利です。最終的なテストテープでのメカニズム特性は確認できていませんが モノラル出力ですが VUメーター再生状態は違和感はありません。400Hz 0dB LEVEL SET 信号はP,B VOL 10時位置でした。
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TC-707S アンプ部調整箇所 |
400Hz 0dB 信号の録音リファレンステープ Maxell PM 50 では-3dB程下がっていました。録音レベル調整で正常となっており 録音レベルにはまだ余裕がありました。
総合調整すればほぼ初期性能に調整は可能と思います。部品取り機でもあり一応の成果は得られました。実用レベルで現在動作しています。同じ機能で TC-707SD の機種は木製のキャビネットに収納されておらず 今回箱入りにこだわりました。
ヘッド・各調整箇所は製造後触れられていないのとヘッド摩耗程度が良好であったのが幸いと思います。
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修復完了した SONY TC-707S 2Tr-2Ch |
TC 707SD の英文によるサービスマニュアルによる記載事項
バイアス調整
この調整箇所は TEACの調整数値と多少違っています。
調製用信号 マイク入力端子 1KHz正弦波 -60dBm(0.775mV) 入力 マイクVRを調整しACミリボルトメーター(ミリバル)でモニター出力レベル0dBm(0.775V) にセット スイッチはSOUECE
ブランクテープ(リファレンステープ)を装着し 19.05cm/sec で録音
モニタースイッチを TAPE としミリバルの電圧を測定
バイアス調整用トリマーコンデンサーを調整しバイアス電圧が低い(浅い)状態から電圧を上げ 出力レベルが最大値を超えていくとレベル低下します。ピーク電圧より -0.5dB の位置がオーバーバイアス点です。
注 ミリバルでの測定時100KΩの負荷抵抗に発生する電圧を測定してください。
アライメントテープ(テストテープ) SONY J-19-F2
400Hz 185nWb/m (TEAC MTT-5001A 200nWb/m) レベル差1.0dB
ブランクテープ(リファレンステープ) SONY SLH
テンションアームとガイドローラーの特徴
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テープ ガイドローラーの構造 |
50年近くなる電子機器ですが電子部品の極端な劣化はこの機器修理では発生していませんでした。業者の中には手当たり次第に新品の電子部品に交換される方も見受けられます。交換した各部品の単体試験・検査をされた結果なのでしょうか。交換根拠の説明はあいまいな不明確な説明が大半です。
商品製造時であれば各部品の製造時期・納入単価により性能違いがあるのも現実です。同じ規格の部品の場合製造メーカー・品種により納入単価は大きく違っていました。その中でも消耗的な電子部品はアルミ電解コンデンサーです。この機器では ELNA 製が採用されています。基板から取り外し容量値・漏えい電流などの単体試験をしましたがほとんど正常値を示しています。手間は一緒ですので元に戻す場合新品の最近製造分の部品を取り付けるのが現状です。確かに70年代以前に製造された電解コンデンサーは液漏れ・容量抜けの部品は多数発生していました。
今回のSONY製小電力トランジスター(2SC1364)のリード線は表面が黒化しており 酸化銀が遊離しています。マイグレーション症状が見受けられますので時々症状・ランダム雑音症状などはトランジスターの不良を疑ります。これが外れれば修復に時間がかかってしまいます。今回システムコントロール基板内のリレー時々故障が該当します。このような場合トランジスターを取り外しリード線を清掃後コーティングすればこの症状を回避することは可能です。無闇に新品と交換する必要はありません。トランジスター本体部は故障していません。特に骨董品機器の場合各部品故障の仕方を熟知することが大切です。又修理時間の短縮も図れます。基板に実装したままでは各電子部品の良否判定はほぼできません。部品単体試験が必要です。又交換する部品の特性・安全性にも注意をしなければ代用使用することもできません。
2台とも実用レベルまで動作するまで修復ができました。もう少し細かな特性など調査し調整する予定です。破損個所については部品取り器・ジャンク品入手も視野に入れて探しています。ただその部品取り器も修復でき同等機種が増殖する結果ともなります。これが物を捨てられない症候群です。今話題となっているゴミ屋敷となる兆候かもしれません。今更骨董品修復できた機器は産業廃棄物・粗大ごみ扱いとして処分はしたくありません。1円でも売却できれば有価物です。産業廃棄物扱いとなりません。今後の課題としては必要な方にお譲りしたいと思います。
新規に作成した副標準テープ
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新規作製した FULL TRACK SUB TEST TAPE Maxell PM50-5LB |
自己修復品 TEAC X-10R で以前作成した副標準テープは今回 4Tr-2ch からフルトラックの正規テストテープと同じ仕様となりました。特にテープスピードについては X-10R であればキャプスタンモーターは直流モーターですのでサーボコントロールによりテープスピードは簡単に調整できますが TC-707 シリーズではACモーター駆動です。簡単にテープスピードの調整はできません。しかし正規のテストテープでもって校正したテープを作成することにより ほとんど誤差が発生していない副標準テープが作成できたわけです。テープスピードは調整できませんので誤差分を補正すれば正規テストテープと同等です。
副標準テープ作成において悩みました。規準となるレベル設定です。正規のテストテープは数種類所有していますが各テープは経年劣化が発生しており同じ信号が同じレベルになりません。基準値が異なっています。最終的に当時の規格ではありませんが比較的近年に作成された校正証明はありませんが MRL 1000Hz 0dB 250nWB/m を基準値の所有している副標準テープと各テストテープを確認しながら基準値を導き出しました。推察ですが正規品との誤差は数dB以内になっていると思います。これでもって各種テープデッキを調整しましたが不具合は発生していません。
今回も使用した生テープはMaxell PM50-5LB を使って作成しました。この生テープはプロ仕様の100番タイプのテープです。気長に探せば現在でもリールサイズが異なっていても新品の生テープは入手可能です。
各種生テープによる 400Hz 0dB(0VU)キャリブレーション信号特性調査
今回このTC-707FC はリファレンステープとして Maxell PM50 のテープを採用し バイアス・録音レベル調整しました。このテープで調整した場合、他の音楽専用テープであれば入・出力レベル変化が1dB以内となっており dbx を使用した場合でも大きな特性変化は発生しません。
録音トラックはフルトラック記録であり 副標準テープに使用する生テープ選択のため各テープの特性を調査しました。調査した生テープは製造後半世紀近くのものもあり テープの経年劣化等が発生していると思います。参考程度の記載とご理解ください。所有しているテープでの調査です。Maxell PM50 を含め下記に記載したテープ種は 近年程度のよい中古品・新古品として入手したテープです。TDK,FUJI FILM,輸入品については当時7号テープは購入していませんので調査できません。他に多品種の10号リール生テープも所有していますがこの TC-707FC には取り付けることができませんので調査外です。今回各テープのバイアス調整はしていません。バイアスを調整すれば多少良くなると思いますが民生用デッキでは細かく調整する機能はありません。
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未開封品として入手した QUANTEGY 456 |
製造されているテープ種
SM 900 AMPEX 499 同等スタジオグレード 100番タイプ
SM 911 QUANTEGY 456 同等スタジオグレード 100番タイプ
LPR 35 QUANTEGY 457 ロングプレイタイプ 150番タイプ
近年製造分テープではテープ走行系の汚れも少なく テープのドロップアウトも発生しにくいテープであると思いますがちょっと高額でありなかなか手が出ません。入手可能であれば QUANTEGY 456 未開封品を探します。AMPEX 456 表示テープはQUANTEGY 456 より製造後年月が経過していますのでちょっと敬遠します。国産品であればMaxell PM50 系の未使用品もしくは程度のよいスタジオ・放送局放出品を狙います。
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TC-707シリーズが販売された時代の SLH 生テープ |
各種生テープの調査
Scotch 111 THD(歪率) 1.0% 50μ 1970年前後製造
SONY SLH THD(歪率) 0.6% 35μ LH 1970年前後 SONY SLH-370 (銀箱)
SONY SLH-72-BL THD(歪率) 0.5% 35μ LH 1975年前後 SONY SLH-72-370BL (銀箱)
Scotch 207 THD(歪率) 0.4% 35μ LH 1975年前後 Scotch 207 (プラスチックケース)
Scotch 218 THD(歪率) 0.42% 35μ LH 1975年前後 Scotch 218-R60LHRC (金色紙箱)
Scotch 212 THD(歪率) 0.75% 35μ L 1975年前後 Scotch 212 (プラスチックケース)
Maxell UD35 THD(歪率) 0.4% 35μ 1975年前後 UD35-60B
BASF PER528 THD(歪率) 0.25% 50μ 不明 放送局払下げ品
agfa PER555 THD(歪率) 1.1% 50μ 不明 TEAC YTT-5001A TEST TAPE
QUANTEGY 456 THD(歪率) 0.24% 50μ 2002年(製造ロット番号より推察) 未開封品
テープ厚みμ(ミクロン) テープ種 L はローノイズ LH はローノイズ・ハイアウトプットを表しテープに記載してありました。50μ厚さを 100番タイプ 35μ厚さを 150番タイプと呼んでいます。
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テストテープ素材として最適な QUANTEGY 456 5号リール |
TEAC X-10R の取扱説明書には歪率は0.8%(基準レベル)と表示されており 音楽専用テープであれば規格は満足しています。基準信号はほとんどの場合1000Hzですが400Hzと比較しましたが歪率に大きな差がありません。ほぼ同じ歪率と思います。当時は今日のような測定機器も多数所有しておらず 耳だけでテープの良し悪しを判別し購入していました。
これらの数値により生テープ磁性体の磁気飽和点を探しているわけです。同じ録音電流でありながらテープ種により磁気テープに残留する磁力が異なっていることが判明します。これがピーク信号などが録音された場合ソフトディストーションとなり飽和した急激なパルス波形とはなりません。これがアナログの耳障りとなりにくい理由です。デジタル録音であれば飽和領域を過ぎればすぐに歪が増加します。
上記生テープの特性調査結果から TEAC YTT-5001A 400Hz 0dB LRVEL SET 200nWB/m の互換品である副標準テープを作成しました。
採用した生テープは 最良のスペックが得られる QUANTEGY 456 を選択しました。所有しているテストテープはレベル調査しますと各テストテープの 400Hz 0dB信号は各テープで違う数値を観測しました。最近入手したMRLテストテープと校正してある 1000Hz 250nWB/m の副標準テープ信号レベルから -2dB を 今回の基準レベルとして作成しました。所有しているテストテープは製造後結構年数が経過していますので 設定した基準レベルから -1.0dB~-3dB程レベル低下が発生しています。上部画像の QUANTEGY 456 5号リールのテープにフルトラックで 基準周波数 400Hz ±0.5Hz以内 の信号で作成となりました。記録された信号レベルの変動は ±0.2dB 以内 となっており副標準テープとしては優秀な特性のテストテープが完成しました。規準となる正規校正証明のあるテストテープと校正すればこの作成したテープも標準テープ(テストテープ)と呼ぶことができます。基準値の証である校正証明書がありませんので副標準テープと呼びます。
TEAC YTT-5001 初期のテストテープにはレベルが 185nWB/m と表示されたテープもあり レベル差は 1.0dB ありますので使用する際にレベル差を換算すればテストテープとして使用することができます。SONY 400Hz 0dB 信号が記録してあるテストテープは SONY alignment tapes, J-19-F2 です。400Hz 基準信号は 185nWb/m です。このテストテープも入手困難です。
市場では数の少ない SONY TC-707FC FULL TRACK MONO 仕様の録音機が正常に動き出したからこそできる技です。
上記資料は参考程度とご理解ください。
このデッキが入手できましたので 道楽作業の一環として 周波数特性調整用の副標準テープ作成ですが このテープを作成するには各周波数を変更して再生されるレベルを正確に合わさなければなりません。時間のかかる手作業ですので のんびりと進行させていただきます。単一周波数であれば作成は比較的簡単です。
結局同じような機種が増殖する結果となりました。その後リール台と60Hz用モータープーリー部品調達として またもや TC 707MC に手を出してしまいました。相当使い込まれた完全ジャンク品です。操作ボタン用特殊豆電球切れも発生しています。定格 28V,0.04A DC24V で動作していました。仕方なく近代の高輝度白色LEDに変更お遊びです。その機器も修復作業で実用レベルとはなりましたが最終的には解体となります。工作を含め多くの時間を費やしましたが実用レベルまで修復ができました。TC-707FC は故障・不具合箇所も多く機種違いにより再生される基準電圧が異なっていました。もう少し回路を見直して修復・調整をする予定です。
この機種が実働しましたので 時間をかけてデッキ調整用副標準テープが作成可能となりました。
今後テープデッキ修復・調整作業において 高額な入手難のテストテープ(標準テープ)を使用しなくても副標準テープでほぼ初期性能の修復が可能となります。作製した副標準テープは新規に作成しているため 数年はレベル変動は発生しないと思います。
まとめ
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TC-707FC TC-707MC 生テープは QUANTEGY 456 7号リール |
上記画像は修復完了したSONY TC-707FC と SONY TC-707MC です。どちらの機器が該当するか判別できますでしょうか。外観上は判別できません。製品ラベルを確認するかヘッドの構造を見なければ判別はできません。PB VOL のつまみがないのが TC-707FC FULL TRACK HEAD 搭載品です。今回長時間の録音再生テストをしたテープは製造後極端に古くない QUANTEGY 456 です。AMPEX 456 から引き継いだ名称であり テープの特性変化は見受けられません。特長であるテープの色は赤茶けています。
右側のデッキ上部に水色のゴミがついていますが これは自作したホールドダウンテープでテープ保管時テープがほどけないようにする仮の接着テープです。
エージングに使用しているテープは TC-707FC で作成したテープです。フルトラック録音であるためマスター巻きとなるように左側のリールは空リールです。右側に使用するテープを装着し空リールに巻き戻しをしてから運用します。
この TC-707FC で録音したテープを他の機種で再生した場合 ステレオ機であれば 視覚上VUメーターが左右同じような振れ方が確認できます。修復完了した TEAC X-10R でも実験しました。アンバランス状態の場合は再生アンプ特性が狂っているのが判明します。テープスピードが19cm/sec のデッキの場合トラック違いがあっても再生される音はモノラルですが同じレベルにならなければどこか狂っていると判断できます。2Tr-38機であっても19cm/sec モードがあれば同様です。1/4 inch TAPE 4Tr-4Ch 機でも同様です。調整用テストテープがフルトラックで記録されているのが理解できると思います。
TC-9400A 4Tr,2Ch ステレオデッキの入手
この機種はリール台の修復用途として入手しましたが 部品の規格が異なり部品取り機とはなりませんでした。各ヘッドの調整箇所がいじられています。ねじロックペイントがはがれていました。最悪です。メカニズム構造は TC 707シリーズを継承していました。
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TC-9400A メカニズム構造 |
同じメカニズム構造であるためTC-707FC のリール台破損箇所部品取りとして入手しましたが この機種は相当コストダウンされた設計です。リール台はプラスチック製で補修部品として使うことができません。今回ジャンク品として入手しましたが各ヘッド調整ねじが全数いじられておりまともに動作しないものからの蘇生です。
操作はソフトタッチのキー操作ではなく通常のテープレコーダーのようなメカニカルレバーで動作する構造です。そのためシステムコントロール基板も簡素化されていました。
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総合調整中の TC-9400A |
ブレーキシューがフエルトから天然皮革に交換し安定した動作となっています。
このメカニズムではブレーキ構造に問題がありそうです。
バンドブレーキ構造ではブレーキ調整の必要な機器は数は多くありません。
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ヘッド取り付けベースの状況 |
TC-9400A で採用されているブレーキでも リールの回転する方向によりブレーキの利き具合は異なっています。この作用によりテープがたるまずに停止できるための左・右ブレーキバランス特性です。
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各ヘッド調整 |
ど素人がヘッドをいじくりまわしたようで現状復旧は大変な作業となりますので テストテープ・測定機器類が無い場合は修復困難となります。
各ヘッド調整は誰でもできる作業内容ではありません。ご承知おきください。
今回フェライトヘッドであったため目視ではヘッド摩耗によるテープ接触面段付き摩耗が発生していませんでした。新規ヘッド交換作業と変わらない作業内容です。
ヘッド調整ねじも傷んでいましたので新品のねじ類に交換します。
これらのヘッド調整が完了しなければ各信号レベル調整もすることができません。性能のよし悪しが発生する調整です。
画像のようにこの機種ではヘッドブロックは簡単に分解できます。
通常ヘッド調整ねじは素人では触れてはいけない個所ですので注意することが必要です。いじられておれば ねじロックペイントがはがれており調整ねじを動かした証拠です。ヘッド調整ねじロック状態を確認するのも修復には必要な事柄です。素人・にわかエンジニアもどき などにより闇雲に各調整箇所をいじられた機器であれば修復に多くの時間が必要となります。メーカーサービスでは修理不可として扱われる場合もあります。
ヘッド調整に使用する準備物
・テストテープ 16KHz or 12.5KHz アジマス調整信号
・プランクテープ 録音用テストテープ リファレンステープなど
・半透明のリーダーテープ
・測定機類
オシロスコープ
オーディオジェネレーター
ミリバル
・工具類
消磁してあるプラス、マイナスドライバー
・ねじロックペイント
などの準備が必要です。
1/4 inch TAPE トラック規格
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1/4inch TAPE トラック規格 |
テストテープはフルトラックで各信号が記録されているためトラック数が異なっていても使用できるのが理解できると思います。
磁気信号が記録されている場所は斜線で記入してありますが 何も記入していない場所がガードバンドと呼ばれており信号が記録されていません。これがあるためチャンネル間クロストークが発生しない理由です。
時々簡易調整テープを市場で見かけますが ほとんどの場合録音機が 2トラック・2チャンネル仕様がほとんどであり チャンネル数が異なる場合各ヘッドに現れる信号が変化することが言えます。
TC-707MC はハーフトラックですので真ん中の 2TRACK が該当します。ステレオの2チャンネルでないため①だけが記録されます。生録などで良く使用された 2トラ・38機はこれに該当します。①が左チャンネル・②が右チャンネルとなります。各チャンネルのヘッド幅は 2.0mm しかありません。
TC-9400A は4トラック・2チャンネル仕様機です。上図では4トラックの規格はNAB規格であり国内で民生用として販売されたデッキはこれに該当します。FWD記録の場合 ①は左チャンネル・③右チャンネルとなり REV方向では ③右チャンネル・④左チャンネルとなります。各チャンネルのヘッド幅は 1.1mm しかありません。
AKAI GX-280D-SS は4チャンネル・ステレオであり ①チャンネルは フロント左 ③チャンネルは フロント右 ③チャンネルは リアー右 ④チャンネルは リアー左 と各チャンネルが割り当てられています。
このように1/4インチテープの場合はトラック数により記録されている磁性体の構造が理解できたと思います。ゆえにデッキ調整用のテストテープはフルトラック記録でないと正規の調整は困難であるといえます。
昔の時代 カラオケ・カーステレオなどによく使用されたリアージェットテープは同じ1/4インチテープですが チャンネル数は8チャンネルです。いかに各チャンネルのトラック幅が狭いかが理解できると思います。テープ幅が6.3mm ですので各ヘッド幅は.0.5mm程度と推察できます。
各ヘッド調整項目
・ チルト調整(TILT チルト・仰角)
ヘッド面が走行するテープと平行になっているかを調整します。この調整が狂っている場合ヘッドの摩耗状態が均等とはならずヘッドが変摩耗することになります。又角度がずれている場合テープ走行がずれることもあります。
・ アジマス調整(AZMUTH アジマス・ヘッド角度調整)
テストテープに記録された磁気信号が損失がなく電気信号に変換されるかになります。この調整がずれている場合は他の機種で録音された信号が高域が出ない症状です。ヘッド汚れに似た症状です。この調整はヘッド角度調整信号 16KHz,12.5KHz の高域信号で調整します。又チャンネル間の位相ずれも調整しなければなりません。オシロスコープのベクトルモードでリサージュ波形観測により調整します。又2現象オシロであればADDモードを使えば片チャンネルの位相を逆転すれば調整可能です。
・ ヘッド高さ調整(HIGHT ハイト・ヘッドトラック位置調整)
チャンネルトラックの位置調整です。通常のテープ走行時であれば各チャンネルのヘッド位置が目視できません。そのため半透明のリーダーテープを走行させて目視でヘッド位置を調整します。Ch-1 ヘッド(左チャンネル)がテープの端に来るように調整します。調整値は 0から0.1mmまでとします。この調整が狂っている場合音小又は音漏れ 違うチャンネルの音が漏れるクロストークが発生します。
・ ヘッド面接触状態調整(TANGENCY タンジェンシー ヘッドギャップと走行するテープの位置合わせ)
通常の故障修理ではこの調整は必要ありません。今回ヘッド調整ねじ全数いじられていましたので新規ヘッド調整時に発生する調整項目です。走行するテープの接触面とヘッドギャップの位置を合わせる調整です。この調整が狂っている場合 再生音が出ません。又録音ヘッドがずれている場合録音した音が再生されません。特にバックテンションで走行するテープとヘッド面が接触によりテープレコーダーとしての信号のやり取りができるため微妙な位置調整作業が発生します。再生ヘッドはアジマス調整信号がオシロ・ミリバルで観測した信号レベルが最大値に調整します。
録音ヘッドの場合ヘッドアジマス調整信号を録音し再生された信号を オシロスコープ波形、ミリバルの電圧が最大になるように調整します。
VTRのエンベロープ調整のように 厄介な特性が微妙に変化するためクリチカルな調整作業です。
SONY のサービスマニュアルでは TANGENCY調整を ANGLE調整と呼ばれています。
上記が各ヘッド調整内容です。とりあえず各ヘッドは目視による荒調整をしなければなりません。半透明のリーダーテープでもって目視で各項目を調整します。その後再生ヘッド調整を実施し その後録音モードに移行し アジマス調整信号を録音しながら 再生された信号により録音ヘッド角度調整をします。各調整ねじはバランスよく調整しなければなりません。これが完了できれば 通常のレベル調整項目へ駒を進めることができます。
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TC-9400A 後面メカニズムの配置 |
この機種の電気的調整箇所は多くありません。
取扱説明書のスペック欄にはライン出力調整つまみの解説で つまみ位置が最大(MAX)の時のレベルとして 規定出力の 0dB (0.775V) の表記です。この記載内容からまずはアンプの基準レベルを設定しなければなりません。
MONITOR スイッチは SOURCE ,LINOUT VR は最大値(MAX)とします。
LINE入力端子に 400Hz -20dBm の信号を入力し LINEOUT 端子にミリバルを接続し測定値が 0dBm(0.775V) となるように入力VRを調整します。その時負荷抵抗として100KΩの負荷を取り付けます。
この信号レベルがVUメーター 0VU の指示位置ですので再生アンプ基板 VUメーター感度調整を実施しメーター指示か 0VU となるように調整します。
その後再生アンプ基板の調整です。
TAPE SELECT は NORMAL で調整しています。この機種の製造当時のテープ種でありその後生テープも改良されていますのでSLHポジションでの調整は今回実施していません。
再生アンプ基板
・GAIN 再生レベル調整(P・B レベル調整)
テストテープ400Hz 0dB 信号で調整
・VUメーター感度調整 (METER ADJ)
テストテープ400Hz 0dB 再生信号で指示位置が0VUに調整
・19cm/s EQ(P・B EQ調整)
19cm/c の再生イコライザー調整
以下の調整は再生ヘッド角度調整済みでの調整です。
まずは400Hz 0dB の信号が記録されているテストテープを使用し再生します。MONITOR スイッチは TAPE です。ミリバルの指示値は 0dBm となるように各チャンネル GAIN と記載されたVRを調整します。VUメーターはすでに校正してありますので 0VU となっていると思います。
次に19cm/s EQの調整です。周波数特性調整テストテープを再生し通常は-10dB ですが各再生される信号レベルを測定し±1.0dB となるように19cm/s EQのVRを調整します。高域周波数で顕著な動きとなりますので 12.5KHz,又は16KHz の信号レベルが+1.0dB以内となるように調整します。
録音アンプ基板
・REC GAIN 録音感度調整
400Hz の信号がVUmeterの位置が0VU の信号を録音した場合再生ではVUmeterの指示位置が 0VU となるように調整
・BIAS ADJ バイアス調整
トリマーコンデンサーによるバイアス調整で オーバーバイアスレベルの設定
・TRAP
バイアストラップ調整 コイルのインダクタンスを調整する。録音アンプにバイアス信号が逆流しないようにするトラップ調整
・DUMMY コイル調整
この機種では片チャンネルごとの録音が可能であるため片チャンネル録音時にはバイアス電圧が変化しないように疑似負荷コイルを挿入してバイアス電圧を同一にするためのコイル。各チャンネルごとに調整が必要です。
まずはバイアス調整から始めます。通常の故障修理であればほとんど調整する必要はありません。リファレンステープを使い 1000Hz 0dB の信号を録音します。この作業はオーバーバイアス調整です。この信号を録音しながらバイアス調整用トリマーコンデンサーを容量値が少ないバイアスが浅い状態からバイアス電圧を増加していくと再生された信号のレベルが増加していきます。ピーク値を過ぎてピーク値より-0.5dB の指示位置がバイアス最良点です。各チャンネル同じ調整をします。
400Hzの信号にします。ミリバルの数値が0dBm(0.775V)に入力調整します。VUメーターは 0VU となっていると思います。この信号を録音し再生される信号がミリバルの数値が0dBm(0.775V)となるように各チャンネルGAIN と記載された 録音アンプ調整用VRを調整します。
これらの作業により録音した信号がテープに記録され再生されれば同じレベルとなるようにする調整です。この調整は使用するリファレンステープの特性により変化しますので今回は Maxell PM50 をリファレンステープとして調整しています。現在 SONY SLH のテープは製造終了後多年月経過していますのでリファレンステープとして使用するには問題があると判断しています。
この機種ではLINEOUTPUT VRfは再生VUmeter回路とは連動していません。このVRを可変しても再生VUメーター指示は変化しません。非連動です。
バイアス発振周波数が他社・他機種と比較すると高く 約 170KHz で発振しており 最初は故障と判断してしまいました。発振回路の各電子部品をチェックしましたが異常はありません。TEAC X-10R では100KHz, AKAI GX280D-SS では 110KHz でした。それらに比較しますと約1.5倍ほど周波数が高く故障と判断した理由です。しかしSONY 他機種のマニュアルを見ますと 150~170KHz と記載されている機種もあり正常と判断しました。マニュアルが入手できていないため寄り道作業となりました。フェライトヘッドはやはりパーマロイヘッドに比較すると基準レベルでの歪率は悪いように感じました。これがフェライトヘッドは音がかたいといわれる理由かもしれません。
今回の調整では正規サービスマニュアルを入手できていません。あくまでも個人的判断で調整していますので参考程度と解釈ください。
修復完了後の TC-9400A 測定値
テープスピード偏差 +0.4% 19.05cm/sec
ワウ・フラッター 0.02%
0VU録音時の歪率 0.8% (リファレンステープ Maxell PM50 )
+3VU 録音時の歪率 1.0%
再生周波数特性 +1.0dB 以内
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修復完了した TC-9400A |
このブログは自己責任における解釈の忘備録として作成しています。メーカーからのサービスマニュアルではありません。修復過程などを時系列順に記述しています。同じような作業をされる方の参考となればと思い作成しました。参考程度の資料と解釈ください。
骨董品機器いやガラクタ機器のくだらない説明をしました。文章を最後まで読まれた方は相当のマニア・物好きです。過去の遺物を現在でも実働させるには資料・部品などはメーカーから取り寄せることができません。過去に得た知識及び経験などの くだらない記述内容であったと思います。いずれ世間からは産業廃棄物・粗大ごみとして消えゆく商品をなるべく初期性能近くまで修復するための内容記述でした。無銭庵 仙人は凡人です。暇つぶしを兼ねて多種多様の骨董品オーディオ機器の修復作業しています。近年の人種 スマホ・タブレットなどばかり扱っている人物には縁遠い事柄です。高度成長時代に製造された機器が動き出すと快感が得られます。多少小遣いが目減りしますがパチンコ・競馬などギャンブルで失うよりは損失は少ないと額と思います。
この修復作業は営利を目的としておりません。あくまでも道楽・趣味の一環とご理解ください。多少とも同じような骨董品オーディオ機器に興味のある方には参考となると信じております。時には設計領域まで入ってしまうことがあります。このような機器ではやはり基準値があります。ただ不良個所だけを修復するのでは初期性能が得られない場合もあります。記述内容には理解できない事柄も含まれていたかもしれません。あくまでもアマチュア的精神が根底にあります。入手困難な部品などの加工・工作を伴いながら修復作業を楽しんでいます。
このブログにコメントをいただければ 極力回答できるように心がけています。過去の遺物であっても 捨てられる物であっても 生き返れば満足感が得られます。それは近年のデジタルハード機器・ソフトが主流ですが デジタルくさくない捨てがたいアナログオーディオの世界です。
このようにメーカー出荷時における当時の品質管理に必要な測定機器・測定調整方法など記述した文献は探しましたが数多く見受けられません。誤解釈説明なども多々あると思いますが 道楽作業凡人のたわごととご理解ください。
無銭庵 仙人の独り言
現在でも真空管式ステレオシステムには愛着があります。その中でも真空管アンプ作成には使用されている主要部品の価格高騰です。多くの製造会社の廃業も多く簡単に入手できません。電源トランス・出力トランスが高額となり 中々手が出せないのが現状です。真空管オーディオ雑誌に至っては特殊な回路構成ばかりで目新しいものはありません。過去のコピー品を模造した物ばかりで製作意欲はありません。元々真空管は過去のデバイスであり目新しいことはありません。
骨董品機器を保守するのが一番の近道と思います。高度成長期に製造・販売された機器が市場ではジャンク品として流通しています。これらを修復することが道楽作業となるわけです。ただ補修部品が入手できないというリスクも発生します。当時としては高額な商品であっても今や二束三文の価格で入手できる場合もあります。
このような修復過程を個人的見解によりブログに掲載しています。ただこの道楽・趣味は一般的ではありません。多くの愛好家が存在するとは思えません。職人的な感覚がなければ修復作業を楽しむこともできません。
道楽作業部屋は現在足の踏み場がありません。収集した骨董品オーディオ機器・骨董品測定機器に埋もれています。道楽部屋だけでは保管しきれず 一部は隠れ山小屋・別室に保管しています。
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骨董品測定器群 |
上記記載画像は道楽部屋の骨董品測定機器類です。道楽を続ける中で手足となる測定機類がすぐに使える状態でないと思うように修復副作業ははかどりません。この測定機類も時々校正をしないと正確な調整とはなりません。測定機器の構造も熟知しなければ自己校正作業もできません。時間がある道楽作業であるからできる事柄です。事業所のような ISO9001 シリーズでは測定機器などは定期的に校正しなければなりません。又校正証明書も保管・管理しなければ認証を得ることができません。道楽作業では各測定機器などは校正作業は義務付けられていませんが やはり基準値は誤差の無いように自己校正を実施しています。一種のこだわりです。
おかげさまで物を捨てられない症候群です。この部品は使うことはないと判断し廃棄後 後悔したことも多々あります。これらの理由により あらゆる部品などジャンク品を含め種類ごとに管理保管しています。骨董品修復時新規に購入する部品の数は多くありません。自給自足の修復作業です。メーカー修理であれば純正部品でしか修復できませんが 骨董品機器となると部品の入手は非常に困難な事柄です。時には部品加工もしなければ機能を維持できない場合も多々発生します。
このような環境の中 骨董品オーディオ機器の修復作業をしています。
google+ には上記測定器群の機器説明を掲載しています。コレクション欄の 道楽作業に使用する骨董品測定機器類 に自己校正作業内容なども含め掲載しています。興味のある方はご覧ください。
google+ のサービスは終了しました。あしからず。
東京通信工業製 新古品 PW-5P の生テープを入手
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東京通信工業製 生テープ PW-5P |
付録・おまけ SONY TC-6635 の概要
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TC-6635 |
現在も稼働しますが多少手を加えなければ100%の機能は出ません。以前モーターコイルの断線によりジャンク品の同じ型式を入手して修復は一応しています。
駆動するメカニズムの劣化が発生していました。鉄製のシャフトとピンチローラー駆動アームアルミダイキャスト製においてシャフトとの接触面で硬くなり動きません。アルミダイキャストの劣化により膨張したようです。ジャンク品も同様の症状になっていました。構造としてはモノラルテープレコーダーからの派生と思います。同じ個所の不良が発生していました。この機種で録音した多数本の録音されているテープのデジタル変換作業は TEAC-X10R を使って終了です。
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1モーター・3ヘッド構造のメカニズム |
モータープーリーには60Hz用と明記されていました。3段の段差があるモータープーリーです。巻き戻し時はモータープーリーからオレンジ色の丸ベルトで左上のプーリーに常時回転しています。巻き戻しベルトが切れたためバンコード丸ベルトを現在は使用しています。直径3mmでは細すぎるため5mmが必要なのですが手持ち品にないため仮の巻き戻しベルトです。
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3ヘッド 4Tr-2Ch |
ヘッドカバー内部に50Hz用キャプスタンスリーブは画像の左上に収納されています
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テープ圧接 テープパッド |
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本体裏面 |
特に骨董品1モーター仕様のデッキではゴム関係の劣化等が発生しており部品の入手が困難です。初期性能を発揮するには難しい面もあります。
現在はTEAC X-10R が自己修復作業により稼働していますので 動態保存程度のお遊びデッキです。
以前部品取り用としてジャンク品で入手したデッキはヘッド摩耗程度が少なく 今回修復した TC-707MC にヘッドを載せ替えて遊ぶのも面白いかもしれません。
その場合は録音・再生アンプ基板も新たに設計しなければなりません。特性のよいオペアンプIC JRC NJM4558DD など多数ありますので うまく設計すれば難しい事柄ではありません。
TC-707MC,FC は丈夫なメカニズムであり 現在でもメカニズムは立派な特性です。
今後のお遊び課題といたします。
テープセンサー基板拡大写真の要望によりトリミング画像を掲載します。
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返信削除いやー、同じ事を考える方がいるものですねえ。当方も調整用のテープを作成するために707FCを手に入れたクチであります(ヤフオクでジャンク品3000円でした)。やはり高価な調整用テープをすり減らしてしまうのがいやで...(高価なだけならともかく入手まで困難ですから)。当方、所有しているレコーダーはネームで示している通りTEAC X-2000RだけでなくSTUDERのコンソールを3台所有しておりまして、このじゃじゃ馬3人娘の面倒みるためにはどうしても調整用テープが必要となります。当方所有の調整テープはMRL社のNAB規格テープですので、このテープにて707FCを調整しました。ただ、ジャンクで手に入れたものでしたので当然爆弾を抱えておりました。仙人様の様にトランスポート部の問題はありませんでしたが、当方の707FCは録音系統が完全に壊滅(電源ライン直列に入っている抵抗がいくつか焼損、Trおよび半固定抵抗の腐食、さらには録音ヘッドのコアがシュリンケージを起こしていた→いわゆるヘッドギャップの縦ズレ 他)しており、回路の部品交換・調整だけでなくヘッドの研磨作業までする事になりました。同じく当方も707FCのサービスマニュアルを入手することが出来なかったクチでしたので、同じ系列品の707S(こちらは2Trステレオ)のマニュアルをネットより閲覧して、このマニュアルの記述内容をベースに修理調整を行いました。707FCのマニュアルの無い事でお困りの様ですが、707Sのマニュアルはネット上で閲覧できるURLがいくつかありましたので、そこで入手してはいかがでしょう?2ch仕様であることとSLHのセレクタ回路が追加されている事を除けば、各回路基盤の部品の型および時定数は記述内容と回路基盤の部品について全く同じでしたので、調整値および調整方法もこのマニュアルの内容に沿って行えば問題ないと思われます(おそらく)。
返信削除はじめまして。
返信削除私も、最近707MCを入手しました。
デッキ上部にあるコントロールアンプ部分らしい14接点のカードエッジコネクタが破損していて、配線の順番が分からない次第です。
配線がコネクタに接続している画像などありましたら、ご提供いただきたくよろしくお願いします。
ご質問の基板は磁気テープにアルミ箔などを張り付けられている場合 ストップ信号をシステムコントロール基板に送出する働きです。巻末に見にくいかもしれませんが画像をアップしておきます。
返信削除この基板は TC-707FC,TC707MC にしか搭載されていません。